中華圏の学生向け大学院進学塾「支点教育(株)」代表・戚昊輝さん
「新天地で頑張る学生の人生を支える一助になりたい」

2025.05.05

(戚昊輝さん)

日本に進学塾はたくさんありますが、中華圏の学生向けに特化した大学(院)進学塾というのは、あまり馴染みがないのではないでしょうか。

文字どおり、中華圏の学生が日本の大学(院)に進学するためのサポートをすることを目的に日本国内で設立されている塾です。
「中華圏」向けということもあって、中国人だけでなく中国語を話す学生らが顧客となっています。

法務省によれば、2024年6月時点で在日中国人の数は84万4千人。2000年以降、ほぼ右肩上がりに増加しています。
このように来日を希望する中国人が増えていることが、中華圏向け大学(院)進学塾がビジネスとして成り立つ要因の一つです。

在日中国人の約3割が東京都内に住んでいることもあって、塾の所在地も都内に集中しています。
今回インタビューさせていただいた戚昊輝さんも都内で中華圏向け大学院進学塾を経営する在日中国人の1人です。

戚さんが経営する「支点教育(株)」は、経営学、MBAの大学院進学に特化した塾で、東京大学をはじめ、これまでに多数の名門大学院への進学サポート実績があります。

そんな戚さんから、日本人にあまり馴染みのない中華圏向け大学院進学塾の実体や起業のきっかけ、塾業界の話などお聞きしました。

 

−−今日はよろしくお願いします!まず最初に戚さんに自己紹介していただいてもいいですか?

私は天津市出身で、現在、中華圏の学生向けの大学院進学塾「支点教育(株)」を経営しています。
当社は大学院の中でも特に経営学、MBAの分野に特化している塾です。
2020年3月に、パートナーとともに設立しました。

私自身、明治大学大学院グローバルビジネス研究科でMBAを取得しています。
大学院生時代には、私もパートナーも他の中華圏向け大学院進学塾で講師のアルバイトをしていたので、その経験を経営にも活かしています。

 

−−支点教育の社名の由来について教えてください!

良い大学に入るのは、これから日本で人生を送る際の、一番重要な始まり(点)です。
私たちはそのための指導を通じて、生徒たちの人生を「支えたい」という思いを社名に込めました。

 

−−中華圏向け大学院学習塾を経営しようと思ったきっかけはなんですか?

日本政府の政策の影響もあり、2014年頃から日本に来る留学生の数は爆発的に増加しました。
コロナ禍の3年間で一時的に減少しましたが、現在は再び2019年以前の水準に戻り、増加傾向にあります。

留学生が増えたことで、日本の大学院に進学する難易度が上がり、競争も激しくなっています。
外国人向けの進学塾のニーズはこうした状況を踏まえた生まれたものだと思います。

これから先も留学生は増え続けると考えられることから、塾のニーズも高まって、マーケットも広がっていくと思います。そこにビジネスチャンスを感じました。

個人的なことで言えば、私は明治大学大学院でMBAを取得後、2年間日本企業で働いていたのですが、当時趣味でやっていた動画配信者としての活動も起業のきっかけの一つです。

動画では日本留学や生活、文化を中国の学生向けに発信していました。
その時に、視聴者からの反響を聞いて、動画の内容が、これから来日予定の中国人学生たちの役に立っていることを実感したんですよね。
そこで、より直接的に留学生たちの役に立てることはなんだろうと考えた結果、塾を経営することにしたんです。

塾業界は投資が少なく、参入障壁が低いです。また、自分の努力がそのまま業績に反映される業界でもあります。
自分が誠実に、勤勉に頑張った結果が業績として可視化されるところに惹かれました。

 

−−経営学、MBAに特化しようと思ったきっかけは何ですか?

実は一番最初は経営学、MBAに特化するつもりはありませんでした。
しかし、実際に複数学科向けのサービスを提供すると、サービスの質の低下と業界内の競争状況がネックになることがわかったんです。

複数学科のサービスを提供するよりも、自分たちの強みを活かして、特定の学科に特化する方がサービスを最大化できることがわかりましたし、業界内の他塾と差別化することもできました。

もともと経営学やMBAが留学生たちにとって人気で、彼らにとって競争の激しい学科であることも大きな要因ですね。

これからも私たちは経営学、MBAに特化した進学塾であり続けるつもりです。

 

−−なぜ経営学、MBAは留学生にとって人気なんでしょうか?

留学生が大学院に進学するのは、ほとんどが将来の就職のためです。
良い大学の大学院に行って、中国に帰って就職するなり、日本で就職するなり、最終的に良い職場を選ぶことが目的です。

経営学で学んだことは仕事をする上で様々な分野に活かすことができます。経営学で学んだことは、どんな仕事にも応用できる可能性が高いんですよ。
これが経営学が人気の理由の一つですね。

日本での大学院進学を考えている学生は、日本語学科の卒業生も多いので、理系科目が苦手な人も少なくありません。
経営学には理系科目がないことから、数学や理系科目が苦手な学生にとっても親しみやすいです。

また、人気の有名大学のほとんどに経営学部や経営学科があり、留学生にとって門戸も広いため、大学の選択肢が多いと言えます。これも人気の理由だと思います。

 

−−起業した時期はコロナ禍だったわけですが、経営は大変ではなかったですか?

コロナ禍で一番打撃を受けたのは既存の塾です。留学生の増加に伴い、事業を拡大していたからです。

その点、私たちは最初から小規模でビジネス展開したので、リスクは少なかったです。
もちろんコロナ禍が長引いた分、事業拡大は遅くなりましたが。

 

−−中華圏の学生向け進学塾が高田馬場や新大久保、池袋に集中する理由は何でしょうか?

私たちは最初に大久保、その後神保町に移転し、今は高田馬場で事業展開しています。

高田馬場、新大久保、池袋には日本語学校が集中しています。そのため、留学生が多く、その界隈に塾を設立することで、留学生が通いやすいというメリットがあります。

留学生たちにとっても、そのエリアは有名です。
そのため、私たちも最初は大久保にしたんですが、建物が大通りに面していたこともあって、結構うるさかったんですよ。
静かな場所を求めて神保町に移転したんですが、留学生たちにとって、神保町があまり有名でなかったのか、アクセスがわからない人が多かったのが問題でした。

今の高田馬場に移転して、静かさもアクセスのわかりやすさも良くなりました。

 

−−支点教育の授業内容等の特色は何でしょうか?

私たちは、授業に関して、オンラインとオフラインどちらも対応できるようにしていますが、特に生徒一人一人に寄り添った指導や相談に乗ることを意識しています。

また、授業内容だけでなく、オフラインでの対面交流なども充実させることで、「学生たちが勉強できる環境づくり」にも力を入れています。

授業は、日本語の教材を中国語を使って教える形です。
その他、通常の授業以外にも、日本人相手の模擬面談や日中の第一線で活躍されている日本人コンサルタントをお呼びして、日本のビジネス環境などについて特別授業してもらうなどもしています。

特別授業では、私たちでは教えきれない部分を補えますし、大学院進学前に日本語の授業に少し慣れてもらうこともできます。

そもそも日本人との付き合いが少ない学生も多いので、そういった意味でも特別授業がより良い経験になると思っています。

 

−−中華圏向け大学(院)進学塾は経営者にとって参入障壁が低いと仰っていましたが、業界全体として飽和状態になっていないのでしょうか?

私の感覚では、塾の数という点では既に飽和状態です。
ただ、既存の塾を経営している経営者の中には、事業拡大のために教育サービスの質を下げるなど、腰を据えて経営していない人も少なくありません。
そこにスキマが生まれるので、未だに参入障壁は低いと思います。

しかし、いくら参入障壁が低いとはいえ、塾業界は、しっかりと教育の質を高め、学生たちのニーズと向き合い、腰を据えて経営しなければ、長く続かない業界だと思っています。
安易な気持ちで参入すると痛い目に遭う可能性も高いです。実際、倒産する塾も多いので。

 

−−中華圏向け学習塾同士の横の繋がりや日本の会社との付き合いはありますか?

塾同士の横の繋がりでいえば、支点教育に相談に来た学生であっても、実際に聴取したニーズに応じて、専門分野の違う優良な塾を紹介することがあります。

日本の企業との繋がりに関しては、税務や労務関係のほか、日本語学校との付き合いが密接です。
私たちの塾には日本語学校に通っている学生が多く在籍しているので、日本語学校の業界事情にも精通する必要があるんです。
そのため、日本語学校の関係者とは定期的に意見交換しています。

 

−−最後に今後の目標などを教えてください!

私たちは経営学、MBAという狭い分野に特化している学習塾です。
その狭い分野の中で、教育の質を高め、学生たちの進学先をより良いものにしながら、進学実績を増やしていきたいと考えています。

その上で、経営学、MBAの大学院進学塾として業界ナンバーワンを目指します。
日本で経営学、MBAの大学院を目指すなら、まず支点教育に行きたいと思ってもらえるような塾にしたいですね。

 

・支点教育(株)
HP:https://www.japanzhidian.com

 

 

【HYAKUYOU編集部】

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