アメリカ・アリゾナ州出身のアレックス・マリ・ピーターズさん
「日本には外国人だからこその暮らしやすさがある」

2025.07.01

(アレックス・マリ・ピーターズさん)

今回インタビューさせていただいたアレックス・マリ・ピーターズさん(以下、マリさん)はアメリカ・アリゾナ州の出身で、お母様が日本人、お父様がアメリカ人の日米ハーフです。

アリゾナといえば、コロラド川の浸食作用によって形成された深い峡谷であるグランドキャニオンが有名です。

マリさんは、そんな自然豊かなアリゾナで大学卒業まで暮らした後に来日。

ALTとして日本の学校で働いた後、現在は日本のスポーツメーカーで勤務しています。

子どもの頃は日本語が好きではなかったというマリさん。

日米ハーフならではのエピソードやアメリカと日本の恋愛観の違いなどお聞きしました。

 

−−今日はよろしくお願いします!初めに自己紹介をお願いしてもいいですか?

私の名前はアレックス・マリ・ピーターズです。出身はアメリカのアリゾナ州です。お母さんが日本人でお父さんがアメリカ人です。
日本に来てから6年になります。

以前はALTとして英語の先生をやっていましたが、最近転職して、今はスポーツメーカーで仕事をしています。
お客さんの約8割が外国人で、やりとりはほぼ英語です。
職場の接客では、あまり日本語を喋る機会がありません。

 

−−最近転職されたんですね!転職のきっかけは何だったんですか?

ALTと違う仕事もしてみたくなったんです。
スポーツが大好きだから、スポーツ関係の仕事をしたくて、この仕事に就きました。

 

−−好きなスポーツは何ですか?

今はバレーボールにハマっています。
アメリカの学校では、シーズンごとにスポーツを変えられるんですが、中学校では、バスケットボール、サッカー、ソフトボールに挑戦しました。
高校では、サッカー、陸上のほか、砂漠の中を走るクロスカントリーなどもやりました。

 

−−アメリカでは北アリゾナ大学に通われていたんですよね!

そうです。北アリゾナ大学に通っていて、四年生のときに名古屋で半年間日本留学して、卒業しました。
ちなみにアメリカでは、進学のために自分の州から離れると、学費が結構高くなるんですよ。3倍とか。
州によりますが、私の学校は、高校で成績が良かったら全額学費を払ってくれるというプログラムがあったので、私はそれを利用しました。

大学生活は、最初の2年間は寮生活で、あとの2年間は友達とシェアルームをしました。

スポーツに関しては、大学でもサッカーを少しやりましたが、ずっとアルバイトをしていたので、あんまり時間がなくて。

 

−−アルバイトは何をされてたんですか?

ホテルのフロントです。
給料はあまり良くなかったんですが、それしか見つからなかったので。
アメリカでは、アルバイトでも経験がないとなかなか仕事が見つからないんですよ。

 

−−大学の専攻も教えてください!

生物学です。
動物の生態を中心に勉強していて、学名を覚えるなどしていました。
アリゾナは自然が豊かなので、色々と外に出て研究できたのはよかったです。

ちなみに一番好きな動物はカピバラです。
アリゾナに野生のカピバラはいませんが、動物園にはいますよ(笑)

 

−−なぜ生物学を勉強しようと思ったんですか?

自然と動物が好きだったからです。
最初の1年間は森林学の授業を専攻して、木の勉強をしてました。
2年生になって、砂を見ながら研究するのがつまらなそうだったので、動物関係の専攻に変えました(笑)

 

−−昔からスポーツが好きとのことでしたが、スポーツ分野の研究に進みたいとかは考えてなかったんですか?

その時は、そこまでのパッションはなかったです。
日本に来てから、スポーツへの興味関心が深まりましたが、研究するには遅すぎましたね(笑)

 

−−日本に来たきっかけについても教えてください!

実は幼い頃は、日本に全然興味がなくて、日本語も嫌いでした。
けど、お姉ちゃんは昔から日本に興味があって、日本のドラマを見たり、音楽を聞いたりしていて、家でずっと日本語が流れていたので、だんだん日本への興味が刷り込まれていきました。アニメを見始めたことも、日本への興味が高まった理由です。

日本のドラマだと、堀北真希さん主演のドラマ「イケメンパラダイス」が好きでした。

その後、大学では日本語の授業を取って、大学に留学で来ていた日本人とも友達になったこともあって、日本に留学することを決めました。

四年生の前期で、授業が全部終わったんですよ。でも、学費は全部払ってもらっているので、もったいないと思ったことも、留学を決めた理由の一つです。

 

−−昔は日本語嫌いだったんですね(笑)!

お母さんが家で無理矢理教えてくるから嫌いでした(笑)
ただ、その後、本格的に日本語の勉強をやる気になったときには、すごく役立ちましたね。

私は英語で返答していましたが、家ではお母さんが頻繁に日本語で話しかけてきていたので、聞き取りは結構できたんです。

だから実際に勉強を始めたら、「あ、これわかる」みたいな。とても楽でした。日本語めっちゃ簡単じゃんって。
とはいえ、ライティングは全然できなかったので、そこはちゃんと勉強しました。

 

−−名古屋での初めての日本留学はどうでしたか?

疲れましたね(笑)
たった半年でしたが、周囲は全部日本語でしたし、転入の際に、何回も市役所などに行かないとだめじゃないですか。

それがすごく面倒でしたし、当時は日本語も全然できなかったので、どうすればいいかもわからず、最初の1か月くらいはちょっと辛かったですね。

ただ、その後は友達もできて、毎週クラブに行ってました。全然勉強してなかったです(笑)

かき氷に練乳がかかったものが乗ったパンケーキも思い出深いです。頻繁に食べ過ぎて、留学生活で結構太りましたね(笑)
日本はお菓子も美味しくて、食べ過ぎました。

 

−−半年間留学してみてどうでしたか?帰りたくないと思いましたか?

半年間はあっという間でした。
まだ日本に残りたい気持ちもありましたが、友達もみんな帰国しましたし、それほど残りたい気持ちは強くはなかったですね。

半年間の留学が終わった後、1ヶ月間は日本に住んでいる叔母の家で過ごしました。
その後、大学卒業した後にアメリカで1年間くらい、仕事を探したんですが、見つからなかったので日本に来ました。

 

−−好き嫌いは置いておいて、お母さんの影響もあって、マリさんの中では、幼い頃から日本は身近な存在だったんですね。

そうですね。
ちなみにアメリカでは、私の顔はアジア人の顔で、みんな見ればわかります。
一方で日本に来ると外国人の顔として認識されます。
ただ、そういった点から自分のアイデンティティに悩んだことはないですね。フラットに生きています。

性格については、周りから「日本人ぽい」とよく言われます。

アメリカ人だったら意見をバーッと言いますが、私はそれがあんまりなくて、空気を読むことが多いので。日本人から、「全然外国人ぽくないじゃないじゃん」って言われます。

個人的には、周りを気にしすぎるところはあまりよくないなと思っています。

 

−−来日して、ALTの先生をやろうと思ったきっかけは何ですか?

日本のドラマやアニメを見ていたら、日本の学校の雰囲気がわかるじゃないですか。
それが楽しそうだなと思っていて、学校の先生になれば、日本の学校の雰囲気を体験できると思ったんです。

就職先として静岡県を選んだのは、いくつか選択肢がある中で、海と山が近くて、一番自然豊かだと思ったからです。
アリゾナは内陸で海がないので、海の近くに住んでみたかったというのもあります。

学校では部活に一緒に参加したりして、楽しかったです。
6年間、ALTとして、色々な学校を回りましたが、最初はサッカー部に入って、男子たちとみんなでウェーイみたいな雰囲気でやれて楽しかったです。

別の学校では、バレーボール部に入りました。それがきっかけで、バレーボールにハマって、今でもバレーボールをやっています。

 

−−就職のために来日してから苦労したことはありましたか?

文章が読めないのは苦労しました。Google翻訳を使ってましたが、読むのが大変でしたね。
最初の1年は、頭の中で翻訳してから話していたので、会話のスピードも遅かったです。
今はもうパっと出てくるようになりましたが。

 

−−マリさんが感じる日本の魅力はありますか?

とにかく日本は暮らしやすいですね。
特別頑張らなくていいところが魅力です。生活する上でとても楽です。

アメリカでは、みんな色々考えて、自分の意見を持って、主張するみたいな雰囲気があるじゃないですか。
一方で、日本人は特に何も言わず、自分らしく生きているように見えます。

また、日本人は私のことを日本人として見ていませんよね。外国人扱いしてくれます。
この部分にも、私はとても自由を感じます。

外国人という立場が楽なんです。
日本人にとっては、私は外国人の顔だから、みんな少し優しくしてくれます(笑)

でも、お店などで、「こんにちは」と言うだけで、「日本語うまいですね」って、言われる際に、毎回説明するのは正直めんどくさいです(笑)

 

−−日本の生活とアメリカの生活でここが違うと感じる部分はありますか?

結構日本の人はみんな自分のプラベートを秘密にしますよね。
アメリカはみんな聞いたり、言ったり、すごいオープンです。
日本のプライベートライフにはびっくりです。

例えば、会社で隣席の人が、ずっと一緒に話して仲良くしていて、独身だと思っていたら、急に社内発表で「結婚しました」みたいな。
いっぱい話したのに、すごい急だと思って。そういうところはびっくりしましたね。

他にも、日本人のグループで、男性と話すじゃないですか。
その男性がめちゃくちゃ優しくしてきて、「お、これは私のことを異性として見てるのかな」みたいに感じても、聞いてみたら「彼女がいる」みたいな。
そういう距離感がアメリカとは少し違うなと思います。

 

−−ぜひマリさんから見たアメリカの恋愛事情も聞いてみたいです!

日本では1〜3回のデートで付き合う人が多いですよね。

アメリカでは、人によりますが、3ヶ月間から1年くらい、結構長い間、彼女、彼氏じゃなくて、いろんなデートとかして、この人いいなって思ったら、じゃあ彼女になってください、みたいな流れが多いと思います。

すぐ付き合う人もいますけど、日本ほどじゃないと思います。

 

−−最後の質問なんですが、6年間日本に住んできて、これからも日本に住みたいかどうかといったことや今後の目標みたいなものがあれば教えてください!

日本にずっといたいと思います。
アメリカに戻ってもしょうがないかなと思っていて。何もすることもないし、多分仕事も見つからないので。
今は物価が高すぎてアメリカで家とかも買えませんよね。

今の目標はバレーボールをいっぱいすることです。
今の私にとってはバレーが命です。
静岡にいた時は社会人チームに入って、週に3回ぐらい練習していましたが、今は都内でチームを探します。
バレーボールは自分の成長が見えやすいスポーツだと思います。
スパイクの打ち方をはじめ、自分がどれだけうまくなったかが成果としてわかりやすいです。

あと、日本のアニメの「ハイキュー」も大好きなので(笑)

 

 

【HYAKUYOU編集部】

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