
在日華僑華人の学術団体である日本華僑華人博士協会は7月6日、武蔵野大学で「社会科学研究会」の設立大会を開催しました。
これは、社会科学の視点から日中両国の相互理解を深めることを目指すもので、初代会長には武蔵野大学グローバル学部の欒殿武教授が就任しました。
大会では、現代日中社会発展への留学生の貢献に関する講演や、日中関係における留学生の置かれた環境を議論する対談が行われ、両国の未来を担う知の交流拠点としての活動に大きな期待が寄せられました。

日本華僑華人博士協会は、日本の大学で博士号を取得し、中日の大学や、企業で活躍している中国人の専門家·学者で構成されている協会です。
当協会は、「博採衆長、協調発展」(広い知識を吸収し、共に発展を目指す)の理念のもと、教育、研究、技術開発、経営管理など、様々な分野で活躍する会員が所属し、学術的な側面から日本と中国の架け橋となることを目指しています。
大会の冒頭、日本華僑華人博士協会の徐栄会長は、「創設以来、両国の民間交流プラットフォーム構築に尽力してきた。本研究会が、先達の精神を継承し、参加者の成長の糧となることを願う」と挨拶し、研究会の設立意義を強調しました。
また、来賓として登壇した駐日中国大使館教育処の杜柯偉公使参事官は、「社会科学は、異なる文明を理解し、隔たりや偏見をなくす鍵となる。研究会が、客観的な研究を通じて両国民の誤解を解き、共通認識を育む『理解の橋』の堅固な橋脚となることを期待する」と祝辞を述べました。さらに、「理解の橋の橋脚」、「物語を語る権威あるプラットフォーム」、「健全な関係を築く知恵の源泉」という三つの役割を研究会に期待していることも語りました。

全日本華僑華人社団聯合会の張書明会長も登壇し、「欒新会長のリーダーシップのもと、社会科学研究会が日中両国民の相互理解促進に貢献すると確信している」と激励しました。
授旗式では、徐会長から欒新会長へ社会科学研究会の旗が授与されました。
司会者が「本日よりこの旗は、日中両国の学術交流の最前線に掲げられる。知識を剣とし、研究を舟として理解の河を渡ることを呼びかけるだろう」と述べたところ、会場は大きな拍手に包まれました。

その後、欒殿武会長が登壇した講演では、「近代日本と中国の社会発展における留学生の貢献」と題し、100年以上にわたる留学生史を豊富な資料と共に紐解きました。
欒殿武会長は講演の中で、1896年の最初の留学生来日から解説し、彼らが日本の教育機関の発展のほか、豚肉料理といった食文化の普及に寄与した意外な側面を紹介しました。
「日本社会で豚肉が食べられるようになったきっかけは、主に中国人留学生の需要にあった」と独自の視点を披露しました。
さらに、帰国した留学生たちが日本を参考に、中国の憲法·民法制定や教育改革を主導し、「物理」、「化学」、「社会」などといった現代中国語として定着した多くの学術用語を翻訳・導入した功績を解説しました。
「留学生は中国の近代化を牽引する指導者層、特に中間層を育て上げ、国家意識の形成にも貢献した」と分析しました。
最後に、「人為的な分断や交流の阻害をなくすべきだ」と現代社会への警鐘を鳴らし、「分断は一時的なもの。新型コロナウイルスの影響が落ち着いた後も多くの留学生が日本へ留学や就職のために来ている。交流こそが両国にとって非常に重要だ」と力強く締めくくりました。

続く対談では、欒殿武会長、株式会社日本新華僑通信社の編集長を務める蒋豊顧問、西安交通大学日本校友会会長の鄭海洋副会長が登壇し、早稲田大学社会科学院研究員の董鎧源副会長が司会のもと、「留学生の百年―清朝末期から現代までの中国留学生事情」をテーマに議論を深めました。
蒋豊顧問は「近代の留学生と現代の我々は境遇は違えど、国家への貢献意識は共通している」と述べ、「功成不必在我、功成必定有我(成功は必ずしも自分一人の手柄ではないが、その成功には必ず自分が関わっている)」という言葉を引用し、現代の若者へのメッセージを送りました。
また、欒殿武新会長は、100年前も今も変わらず留学生が直面する課題として、「異文化への適応」を挙げ、「現在でも留学生たちは日本社会になかなかアクセスできていない部分がある。これは我々教育者が努力しなければならない。100年前に直面した課題と、100年後に直面する課題には、多くの類似点があると思う」と語りました。

社会科学研究会の発足は、日中両国民の相互理解を促進し、より多くの中国人が日本の一般市民の考え方を理解し、より多くの日本人が中国の政策や現在の発展の成果を理解する意味で、大きな意義を持つ第一歩です。
学術研究を基盤とした交流が、複雑化する日中関係において、相互理解と信頼を育む新たな光となることが期待されます。
(取材・文/劉聰/在日中国人ライター)
【HYAKUYOU編集部】
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