百年越しの文学的系譜、池袋で蘇る──中国語純文学雑誌『創造新志』創刊号発表会
AI時代に問う「純文学の存在意義」、新世代の在日華人作家らが集結

2026.06.01



5月16日、東京都豊島区池袋の暨南大学日本学院にて、新たな中国語純文学雑誌『創造新志』の創刊号発表会が開催された(主催:『創造新志』雑誌社、協賛:千代田教育集団、暨南大学日本学院)。

1921年に郭沫若や郁達夫らが東京で結成した文学団体「創造社」の精神を受け継ぎ、現代の在日華人作家たちの新たな表現のプラットフォームとして産声を上げた本誌。

会場には編集部メンバー、学識者、若手作家らが集い、純文学の存在意義や日本における華文文学の未来について熱のこもった議論が交わされた。




空白を埋める「新志」と創造社の継承


現在の日本の華文文壇において、新聞の文芸欄は存在するものの、中国語の純文学に特化した定期刊行物は長らく不在となっていた。

その空白を埋めるべく創刊されたのが『創造新志』だ。

誌名には、百年前の「創造社」の文学的志を継承しつつ、現代という新しい時代にふさわしい文学を「創造」していくという決意が込められている。

弥生編集長は創刊の歩みを振り返り、「創刊号には郁達夫の長孫である郁峻峰氏からの題字が寄せられた。先人の風骨を受け継ぐとともに、潘城、秋靳など多くの作家による日本を舞台にした小説や散文、詩歌、学術評論を集め、留日文学の底色を色濃く反映させた」と語った。




90年代生まれの台頭と新たな文学史観


本誌の大きな特徴の一つが、1990年代生まれの若手作家たちの躍進だ。

執行編集長であり、自身も90年代生まれの小説家である春馬氏は、百年の日本華文文学史を「日華文学前史」と「現代の日華文学」に分ける独自の二段論を提唱。

「先人たちの文学的養分を汲み取りつつも、我々新しい世代がゼロから海外華文文学の枠組みを再構築していく。今日ここに集った皆が、新たな文学史の証人となる」と意気込みを語った。




不確実性の時代における文学の力


生成AIの急速な発展や予測困難な世界情勢の中、なぜ今「純文学」なのか。

劉迪教授は、世界的な長寿雑誌の例を挙げ、「書き手と読者が強固な運命共同体を築くことが重要だ」と指摘。

その上で、「AIが人間のあらゆる営みを代替しうる不確実な時代にあって、何が真の愛であり、何が永遠の存在なのかを発掘し、人々の信念を強固にする力こそが文学の使命である」と力説した。

また、中国広州から駆けつけた暨南大学文学院の蘇桂寧教授は、百年前の留学生たちが日中間の文化の差異から「国民性」の探求に向かった歴史を回顧。

「本誌に描かれる在日華人の生活や人間性の記録は、それ自体が非常に価値のある文学的テキストであり、今後の学術研究における貴重なデータベースとなる」と、雑誌が果たす歴史的・学術的役割を高く評価した。




深い異文化理解と多角的な支援体制


『中文導報』副編集長で詩人の張石氏は、現代の在日作家が日本社会により深く根ざしている点に注目。

創刊号の収録作品に触れつつ、「日本の自然への愛や、歌舞伎などに通底する無常観が見事に表現されている」と評し、先人たちのように古典的・文化的な素養をさらに深く吸収することの重要性を説いた。

また、文学活動を支えるバックアップ体制も心強い。

千代田教育集団の陳秀姐会長は「ペースの速い現代において、純文学は静かだが、国境や言語を越えて人の思想と感情を保存する力がある」とエールを送り、今後の「日本華文教育促進会」設立構想を明かした。

さらに日本国際教育出版社の李建代表も、起業家育成やビジネスの視点から、出版流通やイベント企画など実践的な支援を表明した。




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百年の時を越え、先人たちの文学的志を東京・池袋の地で鮮やかに蘇らせた『創造新志』

弥生編集長や春馬執行編集長をはじめとする編集部チームが、ゼロから奔走し、わずか数ヶ月でこれほどまでに熱量を持った創刊号を世に送り出したその情熱と行動力には、ただただ胸を打たれるばかりだ。

タイパや効率が重視される現代にあって、あえて「純文学」という静かで深い表現手法に挑み、在日華人たちの表現の場となる確かな「ホームグラウンド」を創り上げた主催者たちの功績は計り知れない。

異国での生活で生じる葛藤や日常の温もりを丁寧にすくい上げる本誌は、今後、国境や世代を超えて多くの人々の心を繋ぐ貴重な架け橋となっていくことだろう。

すでに今秋の発行に向けた原稿募集もスタートし、次なるステップへと力強く歩み始めている『創造新志』。

令和の東京で芽吹いたこのみずみずしい文学の樹が、多くの読者や書き手という豊かな土壌に支えられ、大輪の花を咲かせる秋季号を心待ちにしたい。






(取材・文/劉聰/在日中国人ライター。外国特派員協会(FCCJ)会員)

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