「店も街もつぶすな」経営管理ビザ要件の急激な引き上げに抗議の声
当事者が涙の訴え「私たちを追い出さないで」

2026.06.03



外国人事業主が日本で会社を経営する際に必要な在留資格「経営・管理ビザ」の資本金要件が、500万円から3000万円へと大幅に引き上げられた問題で、制度の厳格化に抗議し見直しを求める院内集会が5月13日、参議院議員会館で開催された。

集会は「店も街もつぶす 経営・管理ビザ改悪STOPアクション」が主催し、当事者や支援者、与野党の国会議員ら約115人が参加。

突然の制度変更により、地域社会に定着した外国人住民が帰国に追い込まれている深刻な実態が次々と報告された。

会場では法務省出入国在留管理庁の担当者に、制度見直しを求める5万筆超の署名と要請書が手渡された。




ペーパーカンパニー対策のしわ寄せ、実態ある店が窮地に


昨年10月の省令改正により、経営管理ビザの資本金要件は突如6倍の3000万円へと跳ね上がった。

これについて、政府は「ペーパーカンパニー対策」を理由に挙げているが、主催者の報告によると、全国に約4万1000人いる同ビザ保持者のうち、資本金3000万円以上の企業はわずか4%程度だ。

残る96%の中小・零細事業者が、今後のビザ更新において「2500万円の追加資金」という高すぎる壁に直面し、全国のエスニック料理店など多くの事業が存続の危機に立たされている。




「日本語しか話せない子どもを残してどうすれば」当事者の叫び


集会では、長年日本でインドカレーレストランを営んできた当事者も登壇し、涙ながらに窮状を訴えた。

来日して30年になるクマールさんは、苦労して資金を貯めて店を開き、地域に根ざして生活してきた。
しかし、今回の厳格化によりビザの更新ができず、帰国準備のための「30日ビザ」を突きつけられた。

「子どもたちは日本で生まれ育ち、日本語しか分からない。高校生の娘は大事な進路の時期にある。税金や年金も払い、日本社会に貢献してきたのに、突然ルールを厳しくして帰れというのは人間としておかしいのではないか」と声を震わせた。




専門家らから相次ぐ批判と現場の異常事態 


登壇した専門家からは、今回の制度変更と行政の対応に対する厳しい批判が相次いだ。

アジア専門ジャーナリストの室橋裕和氏は、多国籍な人々が暮らす新大久保の実態を紹介。
「小さなビジネスに挑戦する人たちのエネルギーが街の活力になってきたが、今やみんな怯え、廃業や帰国を考えている」と懸念を示した。

NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」共同代表理事の鳥井一平氏は、「これは厳格化ではなく、いじめであり『官製ヘイト』だ」と断言。
一部の悪質事例を口実に、真面目に働く外国人全体を不当に排除しようとする政策の背景にある排外主義を指摘した。

島本町議会議員の河上りさ氏も、「共に生きてきた地域コミュニティが破壊され、多文化共生の素地が後退する」と、日本社会全体への悪影響を危惧した。

また、外国人支援の実務を担う行政書士たちからも、入管窓口での過酷な実態や国への苦言が呈された。

自身も中国から日本に帰化した1世である行政書士の吉永藍氏は、過去の規制緩和で門戸を広げておきながら、実態を無視した急激な厳格化に舵を切る国の姿勢を「迷走している」と批判。
「少子高齢化が進む日本において、納税してくれる外国人は日本の財産。単なる排除ではなく、法教育などを含めた共生のための長期的な国家設計が必要だ」と訴えた。

同じく行政書士の山田恭永氏は、自宅兼事務所を理由に不許可にされた事例や、変更申請の受付だけで数時間を要するなど「水際作戦」とも言える現状を暴露。「人の人生を振り回すいじめだ」と憤った。




54000筆超の署名を提出


署名キャンペーン「推しエスニックといつまでも」の発起人である鶴ヶ島たろう氏は、「開始から3カ月で5万4300筆が集まった。この問題の深刻さを多くの人が受け止めている」と強調。

集会の中途で会場を訪れた入管庁の担当者に対し、
・資本金額ではなく事業実態を見た審査への転換
・3年間の経過措置の延長
・影響評価の実施と公表
の3点を求める署名と要請書を直接手渡した。

会場では聴覚障害者や聴き逃し防止のために音声文字起こしアプリ「UDトーク」の利用が推奨されるなど、多様な参加者に配慮した運営が行われた。

集会後には、参加者らが国会前でのスタンディングアクションを行い、道行く人々に「共に生きる社会」の重要性を訴えかけた。




【主催者インタビュー】中山永月さんに聞く、アクションの意義


今回の院内集会を主催した中山永月さんは、開催への思いと自らの立場について次のように語った。


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この度、初めて院内集会の主催をしました。

今までやったことのある署名、デモ、スタンディングと言ったアクションとは少し異なる形式のもので、一つのイシューに対してさまざまな主体がさまざまな形式でアプローチするのがよいと考えたため、院内集会も開くことにしました。

また、官庁や、国会議員などにも問題意識を共有することができるので、問題提起をしたという実績や記録が残りやすかったり、より直接的な影響力があったりする点でも、院内集会を開く意義があったかと思います。

初めての院内集会の運営だったので手探りでしたが、経験のある方や多くの方にご協力をいただきながら開催することができました。

私は、典型的な日本人のルックスという意味でも、日本国籍所有者という意味でも、マジョリティです。

構造的なマジョリティとしての責任を自覚し、学んだことを次のアクションに繋げていきたいと考えています。


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制度の変更や数字の引き上げという行政手続きの先には、クマールさんのように長年日本に根を下ろし、家族とともに生活を営んできた人々の人生がある。

集会での涙ながらの訴えは、ルール変更によって翻弄される当事者の厳しい現実を浮き彫りにした。

法律の厳格化が、結果として地域社会を真面目に支えてきた外国人住民や、日本で育つ子どもたちの生活基盤を根底から揺るがす事態を招いているとすれば、制度のあり方や運用には慎重な検証が必要だろう。

労働力減少が進み、外国からの人材や活力を必要とする日本社会において、適正なルールの執行と「多文化共生」をどのように両立させていくのか。

行政には、現場で起きている実態や悲痛な声に耳を傾け、社会全体にとって不利益とならない、バランスの取れた対応策を模索することが問われている。






【HYAKUYOU編集部】

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