
6月14日、早稲田大学にて第25回「漢語橋」世界大学生中国語コンテスト日本地区決勝大会、並びに「国航杯」大学生中国語スピーチコンテストが盛大に開催された。
中華人民共和国駐日本国大使館教育処および早稲田大学孔子学院が主催し、日中文化交流センターの運営により行われた本大会には、全国各地の予選を勝ち抜いた25名の大学生が出場した。
本コンテストは、中国語能力と中国文化への理解を総合的に競い、世界大会への日本代表を決める「A組(漢語橋)」と、日本で生まれ育った華人華僑の大学生を対象に中国語学習の成果を発表し交流を深める「B組(国航杯)」の2部門で実施された。
出場者はそれぞれ、中国語によるスピーチと中国文化特技披露を通じて、日頃の学習成果を存分に発揮した。
開会にあたり、早稲田大学の江正殷教授(国際部参与・孔子学院長)、ならびに特別協賛である中国国際航空日韓地区支社長の馮力氏が登壇し、出場者へ激励の言葉を送った。
また、パナソニックホールディングス株式会社代表取締役の本間哲朗氏からは、流暢な中国語によるビデオメッセージが寄せられた。
本間氏は自身の駐在経験を振り返り、「中国語は単なる言語ではなく、心を結ぶ架け橋である」と語り、若き学習者たちを鼓舞した。
豪華ゲストが登壇し、会場を魅了
審査の合間には、豪華な特別ゲストを招いたトークショーが行われた。
一人目のゲストとして、2024年パリオリンピックのバドミントン女子ダブルスで銅メダルを獲得した志田千陽さんが登場。
海外遠征の合間を縫って続けているという自身の中国語学習法や、中国の選手たちとの温かい交流エピソードを披露し、「夢や目標を持つことが継続の力になる」と学生たちに力強いエールを送った。
続いて、中国の人気俳優である朱賛錦さんが登壇した。
自身も探求を続けているという中国の伝統文化「タンカ(チベット仏教の仏画)」の実物を日本に持参して紹介したほか、幼少期から学んできたという中国古典舞踊や民族舞踊の美しい所作を即興で披露し、会場を大いに沸かせた。


新潟大学の今岡光さんがA組一等賞に輝き、日本代表に
すべての発表を終え、審査員を代表して明治大学の加藤徹教授が講評を実施。
「語学コンテストの枠を超え、一人一人の個性や生き方が見える素晴らしいコンテストだった」と出場者を称えた。
また、早稲田大学常任理事の渡邉義浩教授や、中華人民共和国駐日本国大使館の趙宝鋼公使から、日中友好の架け橋となる若者たちへの期待と感謝の言葉が寄せられた。
なお、当日は中国駐日本大使館教育部長である田露露公使参事官が来場し、趙宝鋼公使のメッセージを代読した。
厳正なる審査の結果、A組(漢語橋)において、新潟大学創生学部4年生の今岡光さんが見事優勝を果たした。
今岡さんは日本代表として、今年の夏に中国で開催される世界大会への出場が決定している。
HYAKUYOUでは、このハイレベルな大会を制した今岡光さんにインタビューを実施。
スピーチに込めた思いや、中国語学習を通じた異文化理解について語っていただいた。
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--まずは優勝おめでとうございます。大会を終えた今のお気持ちをお聞かせください!
今岡光さん(以下、今岡):
ありがとうございます。
まずは、「漢語橋」を通じて、同じように中国語を学ぶ仲間と出会う機会を与えてくださった大会運営の皆様に心より感謝申し上げます。
また、8月に予定されている中国での研修旅行で、全国の参加者とさらに交流できることを今から楽しみにしています。
今回の日本大会では、世界大会への出場権が得られる2位以内に入ることができれば十分うれしいと思っていました。
そのため、優勝という結果は自分自身でも大変驚いています。一方で、大会に向けて支えてくださった先生方や友人たちは、私以上に喜んでくださいました。
練習の段階から「今岡さんなら優勝できるよ」と励まし続けてくださった方々の期待に、少しでも応えることができたことをうれしく思っています。
私は今回、優勝そのものを目標にするというよりも、自分の考えや経験をスピーチを通して伝えること、そして相声で観客の皆さんに楽しんでいただくことを大切にしながら準備を進めてきました。
本番では予選以上に会場の反応を感じることができ、「楽しんでもらえた」という手応えを得られたことが何よりうれしかったです。
その一方で、自分自身ではまだ改善すべき点も多く見つかりました。
今後は日本代表としての責任を自覚し、世界大会に向けてさらに中国語力や表現力を磨いていきたいと考えています。
--今回のスピーチや発表では、どのような思いを伝えたいと考えていましたか?また、そのテーマを選んだ理由を教えてください!
今岡:
今回のスピーチで最も伝えたかったことは、「天下一家(世界は一つの家族)」という言葉は決して遠い理想ではなく、日常の何気ない文化の違いを理解しようとすることから始まる、ということです。
私は中国での留学中に経験した「値切り交渉」を題材に取り上げました。
最初はなかなか理解できなかった文化でしたが、人々との交流を通じて、それが単なる価格交渉ではなく、人と人との距離を縮めるコミュニケーションの一つでもあることに気づきました。
その経験から、異文化への戸惑いや違和感こそが相互理解のきっかけになり、それが友好につながっていくのではないかという思いを伝えたいと考えました。
また、できるだけ多くの方に楽しみながら聞いていただけるよう、スピーチの構成にも工夫を凝らしました。
タイトルを「天下一家―『便宜一点(少し安くしてください)』から始まる物語」とし、中国での実体験をもとにユーモアを交えながら話を展開しました。
中国人の方には共感していただき、日本人の方には「そんな文化があるのか」と新たな発見を感じていただけるよう意識しました。
最後は「次に会ったときは、『これもご縁だから安くしてください!』と言えるようになりたい」という言葉で締めくくり、会場に笑顔を届けられるよう心掛けました。
一方、中国文化特技披露では、中国の伝統話芸である「単口相声(中国式漫談)」に挑戦しました。
当初は中国文化に関する特技と呼べるものがなかったため、自分の強みである中国語を最大限に活かせる発表を考えた結果、相声を選びました。
内容は、中国の食事の席でよく見られる「誰が会計を支払うか」をめぐるやり取りを題材に、日本人の私が中国文化に戸惑いながらも少しずつ慣れていく様子をユーモアたっぷりに表現したものです。
スピーチと同様に、日本人の視点から見た中国文化の魅力や面白さを伝えることを意識しました。
本番では多くの方に笑っていただくことができ、大きな手応えを感じました。

--中国語の学習を始めたきっかけと、中国語を学ぶ中で特に印象に残っている経験があれば教えてください。
今岡:
中国語を学び始めたきっかけは、大学2年生の秋に参加したインターンシップでした。
最終日の打ち上げで本格的な中華料理店を訪れた際、食べたチャーハンがとてもおいしく、店員さんに感謝の気持ちを伝えたいと思いました。
しかし、当時の私は中国語を全く話すことができず、言葉が出てきませんでした。
一方で、一緒にいた知人は「谢谢(ありがとう)」や「好吃(おいしい)」と自然に中国語で気持ちを伝えていました。
その姿を見てとても羨ましく感じたことを覚えています。
また、そのときに見た店員さんの温かい笑顔は、それまでニュースなどを通して抱いていた中国のイメージとは大きく異なるものでした。
この出来事が強く印象に残り、「自分の目で中国を見てみたい」「中国語を学んで現地の人と話してみたい」と思うようになりました。
そして中国語の勉強を始め、さらにその約1週間後には中国への留学を決意しました。
中国語学習を通して特に印象に残っているのは、中国の方々がとても温かく励ましてくれることです。
中国では「你好(こんにちは)」と話しただけでも褒めていただけることがあり、その一言一言が学習の大きな励みになりました。
留学中は、クラスの中で自分が最も中国語が苦手だと感じることも多く、なかなか自信を持つことができませんでした。
しかし、中国で初めて一人旅に挑戦し、15時間の寝台列車に乗って哈爾浜(ハルビン)を訪れた際、多くの方が私の中国語を褒めてくださり、大きな自信につながりました。
さらに後になって知ったのですが、中国には現在も多くの方言が残っており、地域によっては標準語(普通話)を話すことに苦手意識を持つ方も少なくありません。
そのため、中国語学習者としての苦労や緊張感に共感してくださる方も多く、対等な目線で接していただけたことがとても印象に残っています。
中国語を学ぶ中で得たのは語学力だけでなく、人の温かさや異なる文化への理解であり、それらは私にとってかけがえのない財産となっています。
--今回の優勝に至るまで、どのような準備や努力を重ねてきましたか?また、その過程で苦労したことはありましたか?
今岡:
今回の大会に向けて最も大切にしたのは、自分自身が心から納得できるスピーチや相声の原稿を作ることでした。
私は日本人として中国文化をどのように感じたのかを伝えたいと考えていたため、中国人の友人たちと何度も相談しながら原稿を作成しました。
中国人と日本人では笑いのツボや表現の受け取り方が異なることも多く、修正案をもらった際には、その意図やニュアンスについて細かな部分まで話し合い、お互いが納得できる形になるまで何度も推敲を重ねました。
また、発音や表現についても、中国の友人や先生方に加え、中国語学習コンテンツを発信されている「毎日中国語のカネさん」にもご指導いただきながら練習を続けました。
多くの方々の支えがあったからこそ、今回の結果につながったのだと思います。
一方で、準備期間は決して十分ではありませんでした。
実は大会の存在を知ったのが5月に入ってからで、特技披露動画の提出まで約2週間しかありませんでした。
その限られた期間で相声の台本を一から作成し、内容を練り上げながら練習を重ねる必要がありました。
さらに動画提出後すぐに地区予選が控えていたため、スピーチと相声の両方を同時に仕上げなければならず、非常に慌ただしい日々でした。
予選の1週間前になってようやく原稿が完成したため、覚えていた内容を修正部分も含めて覚え直す必要があり、本番では緊張もあってスピーチの一部を飛ばしてしまう場面もありました。
予選前は毎日2~3時間ほど練習を続けていましたが、その影響で喉を痛めてしまい、体調管理の難しさも痛感しました。
また、決勝に向けては「日本代表になるかもしれない」という責任の重さにプレッシャーを感じることもありました。
発音練習を重ねれば重ねるほど、自分とネイティブスピーカーとの違いがより鮮明に聞こえるようになり、努力しているはずなのに自信を失ってしまうこともありました。
それでも最後まで続けることができたのは、多くの方々からの応援があったからです。
振り返ってみると、優勝という結果だけでなく、悩みながらも挑戦し続けた準備期間そのものが、自分を大きく成長させてくれたと感じています。
--中国語学習を通じて、日本と中国の相互理解のために大切だと感じていることは何でしょうか?
今岡:
私は、中国語学習を通じて日本と中国の相互理解のために最も大切なのは、「まず相手を知ろうとする姿勢」だと感じています。
私のスピーチでもお話ししたように、それぞれの国や地域には、それぞれの歴史や文化、価値観があります。
しかし、自分の文化や常識だけを基準に物事を見ていると、相手の考え方や行動の背景を理解することは難しいと思います。
私自身、中国で生活する中で、日本では当たり前ではない文化や習慣に数多く出会いました。
最初は戸惑うこともありましたが、その理由を知ろうとしたり、実際に現地の方と話したりすることで、新たな発見や理解につながることがたくさんありました。
今回のスピーチで取り上げた「値切り交渉」もその一例です。
当初はなかなか理解できませんでしたが、その背景にある人と人との距離の近さや温かさを知ることで、見方が大きく変わりました。
国同士の相互理解というと難しく聞こえますが、私はまず一人ひとりが相手の文化や考え方に興味を持ち、「なぜそうなのだろう」と考えることから始まるのではないかと思います。
そうした小さな理解の積み重ねが、人と人とのつながりを生み、ひいては日中両国の友好にもつながっていくと考えています。

--今回の優勝を受けて、今後挑戦したいことや将来の目標について教えてください!
今岡:
まずは、世界大会で世界各国から集まる中国語学習者と出会い、交流できることをとても楽しみにしています。
今回の漢語橋を通じて、同じ目標に向かって努力する仲間と出会うことの素晴らしさを実感したため、世界大会でも多様な背景を持つ参加者と積極的に交流し、視野を広げたいと考えています。
また、私は2027年から中国の大学院へ進学し、生涯学習について研究したいと考えています。
そのため、まずは大学院入試に向けて学業や中国語の勉強に一層励み、自分の研究を深めていきたいと思います。
将来的には、中国で学んだ知識や研究成果を日本に持ち帰り、多くの人に生涯学習の重要性を伝えていきたいと考えています。
人生100年時代といわれる中で、年齢や立場に関係なく誰もが学び続けられる社会づくりに貢献したいと思っています。
そして、一人ひとりが学びを通じて可能性を広げ、より豊かな人生を送れるよう支えることが私の目標です。
今回の優勝は一つのゴールではなく、新たなスタートだと考えています。
世界大会や今後の研究活動を通じてさらに成長し、中国語学習者としてだけでなく、日本と中国をつなぐ架け橋となれるよう努力を続けていきたいと思います。
--最後に、中国語学習に励む学生や、これから国際交流に挑戦したい若い世代へメッセージをお願いします!
今岡:
まずは、悩みすぎる前に一歩踏み出してみてほしいと思います。
中国語学習や留学、国際交流に興味があっても、周りに経験者がいないと、とてもハードルが高く感じられるものです。
私自身も最初はそうでした。
そんなときは、ぜひ実際に経験した人の話を聞いてみてください。
経験者のもとへ足を運び、話を聞くだけでも不安は大きく和らぐと思います。
なぜなら、その人たちも以前は同じような不安や悩みを抱えながら挑戦してきたからです。
経験者だからこそ、自分がつまずいたことや乗り越え方、具体的なステップを教えてくれます。
その話を聞くことで、「自分にもできるかもしれない」と思えるようになり、次の一歩を踏み出しやすくなります。
私自身も、中国語学習や留学を通じて多くの経験者と出会い、支えていただきました。
そのおかげで海外に挑戦することへの心理的なハードルが大きく下がり、今では中国だけでなく、さまざまな国や地域を訪れてみたいと思うようになりました。
国際交流や語学学習は、単に言葉を学ぶだけではなく、自分の世界を広げてくれるものだと感じています。もし少しでも興味があるのであれば、まずは経験者の話を聞くことから始めてみてください。
その小さな一歩が、将来の大きな挑戦につながるかもしれません。
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「外国語を習得することは、もう一つの心のパスポートを手に入れること」。
開会式での江正殷教授の言葉が深く胸に刻まれる大会だった。
今岡光さんをはじめ、舞台に立った出場者たちの姿は、単に語学力が高いというだけでなく、異文化を理解し、人と人とを繋ごうとする熱い思いに溢れていた。
言葉の向こう側にある相手の心や文化に寄り添う姿勢こそが、まさに世界を繋ぐ「架け橋」なのだと実感させられる。
日本代表として世界大会へと挑む今岡さんの更なる飛躍と、日中の未来を担う若者たちの挑戦を、これからも心から応援したい。
写真提供:第25回「漢語橋」世界大学生中国語コンテスト日本地区大会 公式
第25回「漢語橋」世界大学生中国語コンテスト 日本地区大会
HP:https://university.chinesebridge-japan.education/
(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。日本外国特派員協会(FCCJ)会員)