中国エリート層の「潤日」現象がもたらす地殻変動と摩擦──舛友雄大氏が都内で講演

2026.07.08

※追記・訂正(2026年7月20日):初出時、記事内の「赤坂に進出した超高級中華料理店のコース料金」について、「8万8000円から」としておりましたが、正しくは「6万6000円から」でした。お詫びして訂正いたします。

(『潤日:日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)の著者・舛友雄大氏)



中国の富裕層や知識人たちが相次いで日本へ移住する「潤日(ルンリィー)」現象。

その実態と日本社会に与える影響について、ベストセラー『潤日:日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』の著者でジャーナリストの舛友雄大氏が16日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で講演した。

舛友氏は、大都市出身のエリート層が東京に集結している現状を報告した上で、高市早苗政権下で厳格化された外国人政策が引き起こしている波紋や、多文化共生社会に向けた課題について語った。




「安全な避難所」としての日本


「潤(ルン)」とは、英語の「Run」と同音であることから、より良い生活を求めて中国を脱出することを意味する。

舛友氏によると、パンデミック以降、数万人規模の中国人富裕層(100万米ドル以上の投資可能資産保有者)が海外へ流出している。

中でも日本は「物価の安さ」「地理的近接性」「治安の良さ」「充実した医療・福祉制度」から、安全な避難所(セーフヘイブン)として選ばれているという。

従来の移民が福建省や東北部出身者が中心だったのに対し、現在の新移民は北京、上海、深圳などの大都市出身者が多く、起業家やエンジニア、知識人が中心を占める。

彼らは江東区、文京区、港区といった都心部に好んで居住し、日本のビジネス界においても、これら「潤日マネー」を新たな需要として取り込もうとする動きが活発化している。

赤坂にはコース料金が6万6000円からという超高級中華料理店が進出し、富裕層向けの会員制クラブが人知れず盛況を見せているという。




経営管理ビザ厳格化による「残酷な」現実


一方で、これら新移民の日本滞在に暗雲が立ち込めている。

昨年10月に突然施行された「経営管理ビザ」の要件厳格化だ。

新たな規制では、3000万円の資本金に加え、日本人または永住者のフルタイム雇用などが義務付けられた。

舛友氏は「資金面よりも、人手不足の日本で、かつ中国語を必要とするスタートアップが人材を確保することのハードルが高い」と指摘。

要件を満たせずにビザの更新ができず、わずか30日以内の帰国を余儀なくされるケースが相次いでいるという。

学期の途中で帰国させられ、中国語をゼロから学び直さなければならない子どもたちの事例も挙げ、「かつての親日家が、一転して日本嫌いになって帰国していく。これは規制厳格化の残酷な側面だ」と苦言を呈した。




知の拠点化と、日本社会への恩恵


質疑応答では、他メディアの記者から「中国人コミュニティ内で経済が完結し、日本人を必要としない社会ができているのではないか」との指摘も飛んだ。

これに対し舛友氏は、中間層においてはそうした側面もあると認めつつも、「超富裕層は常に最高品質のサービスを求めており、不動産の購入時などにはコンプライアンスの確認のために日本の専門企業に巨額の対価を支払っている」と反論。

表には出にくいものの、日本のビジネス界が多大な恩恵を受けている実態を明かした。

また、東京が香港に代わる「リベラルな中国人知識人の集結地」となりつつある現状に触れ、活発な知的交流が行われる一方で、中国当局による監視の手が日本国内に伸びるリスクについても注視していく必要があると述べた。




当メディア(HYAKUYOU)記者が直撃──「多文化共生へ必要なこととは」


講演の終盤、私(劉聡)もマイクを握り、中国人住民を含む外国籍コミュニティと日本社会とが多文化共生を実現するために何が必要かを問うた。

これに対し舛友氏は「それは日本が今日直面している最大の課題だ」と前置きした上で、「移民問題は外国人だけの問題ではなく、受け入れる『日本側の問題』でもある。双方向の課題(two-sided issue)であることをまず認識しなければならない」と強調した。

さらに、ネット上で外国人に対する感情的な批判が高まりがちである昨今の風潮を危惧しつつ、「不満の矛先を外国人コミュニティに向けるべきではない。私たちはむしろ、出入国在留管理庁の対応やビザ政策のあり方に目を向けるべきだ。入管内部でも今回の政策が正しいのか意見が分かれていると聞いており、これをより深く取材し検証することこそがメディアの責務だ」と力強く答えた。

新たな資本と才能の獲得か、それとも社会の変容への脅威か。日本社会は今、急激に増加する「新移民」とどう向き合うのか、その度量が試されている。




舛友雄大氏
X:https://x.com/hiromocean?lang=ja






(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。外国特派員協会(FCCJ)会員)

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