
近年、SNSの発展により世界中の人々と簡単につながることができるようになりました。
しかし、画面越しに見える世界は、本当に「リアル」なのでしょうか。
今回は、立正大学心理学部臨床心理学科4年生の小野寺風花さんにインタビューさせていただきました。
大学で140人規模の旅行サークルを設立・運営する傍ら、外務省が推進する「JENESYS(大学生訪韓団)」や(公社)日中友好協会が派遣する「日中友好大学生訪中団」への参加、さらに福島や能登半島での災害復興支援ボランティアなど、多岐にわたる活動に挑戦してきた小野寺さん。
自らの足で現地へ赴き、リアルな異文化や人々と触れ合う中で彼女が感じた「多文化共生のリアル」と、社会に出る今、見据えている今後のビジョンについてお話を伺いました。

直感を信じて動く。失敗が許される学生のうちに、全力で挑戦する
--まずは簡単な自己紹介と、普段どのような活動をされているのか教えてください!
小野寺風花さん(以下、小野寺):
立正大学心理学部臨床心理学科4年生の小野寺風花と申します。
趣味は旅行で、大学3年生の時に「旅行研究会」というサークルを立ち上げ、現在は代表として運営を行っています。
大学2年生の時に外務省のJENESYSプログラムである「大学生訪韓団」に参加したのをきっかけに国際交流にも関心を持ち始めました。
そこで「自分の目で見る大切さ」や「知ることの面白さ」を学び、その後も中国の文化研修に参加したり、さまざまな国籍の人と関わるようになりました。
その他にも、マイナビでSNSライターを担当したり災害復興支援ボランティアなど、好奇心を原動力に「これだ!」と思ったことには直感でどんどん挑戦しています。

--直感ですぐに行動に移せるタイプなんですね!
小野寺:
そうなんです。
直感的に動けるからこそ、周りからは「行動力があるね」と言ってもらえるのですが、母からは「本当に大丈夫なの?」と心配されることもあります(笑)。
でも、学生のうちは常識の範囲内の失敗であれば、すべて自分の「経験」として吸収できると思うんです。
人生の大失敗になるようなことでなければ、失敗が許される間はいろいろなことに挑戦しておきたいと思って動いてきました。
それに、今まで強い信念と自信を持って活動してきたからこそ、今日まで数々の夢を叶えることができました。
--心理学部での専攻と現在の活動は少し領域が違うようにも見えますが、資格取得や進路についてはどう考えていますか?
小野寺:
臨床心理士などの国家資格を取るためには、大学卒業後に大学院へ進む必要があり、道のりがかなり長いんです。
私の周りでも、大学4年間で心理とは関係のない一般企業へ就職する人は多くて、人によって進路が全然違うのが心理学部の特徴でもあります。
せっかく心理学部に入ったのに資格を取らないのはもったいないとよく言われますし、学費を出してくれている母にも言われました。
でも、私はこの4年間で「自分らしさと自分が本当にやりたいこと」を見つけることができたので、もったいないとは思っていません。
臨床心理士にはならなくても、大学で学んだ知識は自分のベースとして今後の活動に活かせると思っています。

観光ではなく「旅」を。様々な人との出合いがサークル設立のきっかけに
--旅行が好きになり、ご自身でサークルまで設立されたきっかけは何だったのでしょうか?
小野寺:
小さい頃から母に旅行へ連れて行ってもらっていたので元々好きだったのですが、特に大学に入ってからは行動範囲が広がりました。
決定的なきっかけは、大学2年生の時に環境省が主催している「福島、その先の環境へツアー2024 大学生考案・取って狩って絞って!五感で味わうふくしま」に参加したことです。
書類選考を経て集まった全国の大学生2、30人と一緒だったのですが、みんなすごくキラキラしていて、行動力に溢れていました。さらに、自分よりも年下の学生がこのツアーの企画に参加していたこともあり、自分も負けていられない!と影響されました。
家の中にこもっているのではなく、自分の足で現地に行き、そこでしかできない経験や出会いを楽しむ姿勢に強く刺激を受けたんです。
それまで旅行はただの「娯楽」だと思っていましたが、そのツアーを通して出会いや経験の面白さに気づき、もっといろんな世界を見たいと思うようになりました。
それが訪韓団や訪中団に応募するきっかけにもなっています。
--ただ観光地を巡るだけでなく、現地の人や文化と深く関わる「旅」を好まれているのですね。
小野寺:
そうですね。
例えば、大阪に行ってテーマパークで遊んでたこ焼きを食べて帰るのが「旅行」だとしたら、「旅」はその土地の生活習慣や独特の雰囲気を感じながら、明確な目的がなくても現地を知っていくことだと思っています。
観光用に作られた美しい景色だけでなく、現地の人が日常で使うスーパーに行ったり、リアルな生活レベルの深いところを知る「旅」がしたいという思いが強いです。
--その思いが、旅行サークルの設立にも繋がったと。
小野寺:
はい。旅行での経験を自分の中だけで終わらせず、誰かの居場所や出会いのきっかけを作りたいと思い、大学3年生の5月に「旅行研究会」を設立しました。
就活やボランティア、訪中団の選考などと並行していたのでかなりハードでしたが、手探りで運営を続けた結果、今年の春には新入生が100人以上も入部してくれ、現在140人規模のサークルになりました。
いろいろと大変なこともありますが、卒業する最後までこうした運営に携われることは本当に良い経験になっています。

タイの孤児院へ。リアルな異文化を知るための果敢な挑戦
--次に挑戦したいと考えている旅やプロジェクトはありますか?
小野寺:
次はボランティアでタイのアユタヤに行く予定です。
世界最大級の孤児院に滞在し、現地の子供たちに日本語を教えながら1週間ほどホームステイをします。
社会人になったらホームステイをする機会なんてなかなか作れないですし、日本と全く異なる生活様式の国で暮らしてみたかったんです。
私、実は少し潔癖なところがあって、衛生観念が違う環境は合わないだろうと最初から分かっているんですが、それをあえて体験しに行くための挑戦です。
「シャワールームにトカゲやクモがいるよ」と脅されたりもしたのですが(笑)、自分と全く違う世界を知りたいという好奇心が勝って申し込みました。
--それはすごい行動力ですね!
小野寺:
普通の旅行では知れる深さに限界があると思います。
ボランティアやホームステイといったプログラムに飛び込むことで、バンコクで象に乗って観光しているだけでは絶対に分からない、現地のリアルな生活レベルまで踏み込むことができると思っています。

SNSの偏見に立ち向かう。本当の「多文化共生」とは
--これまでの国際交流の経験を踏まえ、小野寺さんが考える「多文化共生」の課題についてお聞きできればと思います。
小野寺:
今、SNSが発達して色々な国の人と出会いやすくなったことで、多文化共生が促進されているように見えますが、実は同時に「阻害」もされていると感じています。
ある時、私のサークルにいる中国人の後輩が、日本語能力試験(N1)で満点を取ったことをSNSに投稿し、それがバズったんです。
彼女は昔から日本に住んでいて日本語もペラペラなのですが、コメント欄を見たら「中国に帰れ」とか「なんのために中国人が日本語を勉強しているの」といったアンチコメントも数多くありました。
普段とても明るい彼女が、見えないところでこういう言葉を投げつけられ、深く傷ついていることに大きな衝撃を受けました。
SNSのアルゴリズムによって偏った情報が広まり、本当の姿を知らない人たちが匿名で心無い言葉をぶつける。
画面上の情報だけで「この国の人はこうだ」とカテゴライズしてしまう現状は、多文化共生において大きな壁になっていると思います。
--その壁を乗り越えるためには、何が必要だと考えていますか?
小野寺:
やはり「リアルな接触の機会」を増やすことと、お互いが「相手の文化を知る努力」をすることではないでしょうか。
「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、外国人がその国のルールを守ることは最低限のマナーです。
一方で、受け入れる側も「なぜこのルールがあるのか」を背景から丁寧に伝え、相手の文化背景に寄り添う配慮が必要です。
お互いの文化を尊重し合い、すり合わせていく。
どちらか一方に配慮を押し付けるのではなく、両者が歩み寄り、お互いの当たり前を知っていく過程こそが多文化共生に繋がるのだと信じています。

好奇心を絶やさず、「普通」の枠を超えていきたい
--最後に、これから社会に出る小野寺さんの、今後の目標やビジョンを教えてください。
小野寺:
就職活動の面接でも言っていたのですが、「何歳になっても好奇心を持って学び続ける人」になりたいです。
学生が多く集まるプログラムに、立場や年齢関係なく学生に混じって学び続ける社会人たちの姿に影響を受け、そのように考えるようになりました。
世の中には「普通」という言葉がありますが、私はその「普通」という枠に負けたくないと思っています。
これまで、周りから「一歩引かれる」こともあるくらい色々なことに挑戦してきましたが、自分がやりたいと思ったことをやれる環境があるのに、やらないままでいる方がもったいないと思うんです。
将来的には、「自分だけの道」を歩むことにも興味があります。
今はまだ漠然としていますが、学生時代に「自分のやりたいことを発信すれば、共感してくれる仲間が集まってくる」という成功体験を得られたことは大きな自信になっています。
社会に出ても、好奇心を持ち、学びながら自分のやりたいことをしっかりと形にしていける大人になりたいです。
そして、自分とは違う生き方をしている人を見た時に「あいつは違うから」と引くのではなく、そこから貪欲に学ぶ精神を持ち続けたいですね。
--力強いお言葉、ありがとうございます。小野寺さんのこれからのご活躍、そしてタイでのボランティアのお土産話も楽しみにしています!

JENESYS2024 大学生訪韓団(2025年3月)参加学生報告
HP:https://international.ris.ac.jp/news/20250626.html
日中友好大学生訪中団
HP:https://www.j-cfa.com/project/visit/
(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。日本外国特派員協会(FCCJ)会員)