東アジアの未来を若者の手で──「東アジアみらい共創イニシアチブフォーラム2026」が都内で初開催

2026.08.12




国や大学の垣根を越え、東アジアで学ぶ若者約100名が集結


7月29日、日本、中国、韓国をはじめとする東アジアで学び、国際交流に取り組む若者たちが国や大学の垣根を越えて集う「東アジアみらい共創イニシアチブフォーラム 2026」が、東京都文京区の日中友好会館で開催された。

主催は学生団体N-Create
共催に(一財)日本アジア共同体文化協力機構が名を連ね、東アジア各地の日本人学生会や学生団体が共創パートナー・賛同団体として多数関わる幅広い協力体制のもと実現した。

本イベントは参加費完全無料(ディナー付き)で、年齢や国籍の制限なく開かれ、当日は約100名の学生や社会人が参加。

東アジアでの留学や異文化体験を未来のキャリアや社会課題の解決にどう繋げるかについて、活発な議論が交わされた。




変化する情勢下における「大局観」と「リアルを知る」意義


開会式では、まず共催団体を代表して(一財)日本アジア共同体文化協力機構理事で東京大学名誉教授の苅間文俊氏が挨拶に立った。

苅間氏は「東アジアで様々な出来事が起こる中、学生交流を行う団体の皆様は毎年様々な問題にぶつかり苦労されていると思う。我々は皆さんが活動しやすいように場所を提供する、プラットフォームとしての機能を重視している」と述べ、未来を担う青年交流の意義を語った。

続いて、公益財団法人日中友好会館会長で元駐中国日本国特命全権大使の宮本雄二氏が来賓として登壇。

宮本氏は過去の歴史的教訓を交えながら「大局観に基づく判断」の重要性を説き、「次なる新しい時代の人類文明のモデルを構築し、世界の平和を先導していく新たな展開を若者世代に期待している」と直接若者たちにエールを送った。

本フォーラムを主催したN-Createの南浦知帰代表は、開催の背景について「日本国内で中国や韓国に対する関心が低下していることに危機感があった。日本の今後の成長には、リアルなアジアを知ることが不可欠だ」と語る。

その第一歩として、現地で学ぶ学生たち同士を繋ぎ、強固なネットワークを構築することを目指したという。

(宮本雄二氏)




留学経験から得た「社会的想像力」と「外国人になる経験」


続く団体報告会では、国内外のさまざまな団体が日々の活動や直面する課題について報告。

海外で活動する「清華大学日本人会」や「韓国外国語大学日本人学生会」といった日本人学生団体をはじめ、日本で活動する「日中学生会議」や「日中友好協会」、日中ハーフと華僑のための第3の居場所づくりに取り組む「JC ROOTOPIA」などが登壇した。

その後のパネルディスカッションでは、「中国・韓国で学ぶ日本人学生のリアル:現地理解と日本人としての距離感」や「東アジアで学ぶ経験を未来につなげる:日本人の学生ネットワークとキャリアの可能性」をテーマに議論が展開された。

東京大学特任教授(元国連大学上級副学長・国連事務次官補)の白波瀬佐和子氏のほか、東京大学公共政策大学院SCERUシニアフェローの西澤利郎氏、国際文化会館LEAPプログラムディレクターの長川美里氏ら社会人有識者と学生代表が意見を交わした。

清華大学に留学中の児玉龍之介さんは、中国での生活を通じて「目の前の出来事を個人の問題としてではなく、社会の歴史や構造から理解する『社会的想像力』が身についた」と発言。

韓国外国語大学の北谷珠希さんは、現地で自身が「マイノリティ(外国人)」として生活する経験から、言語能力だけでなく、背景にある文化や価値観の違いを理解し、フラットに他者と向き合うことの大切さを学んだと振り返った。




持続可能なネットワーク構築へ、若者らしいアイデアが続出


後半のグループワークでは、「アジアで学ぶ日本の学生の経験を、どう未来につなげるか?」をテーマに、参加者が12のグループに分かれ、国境を越えたコミュニティを継続・発展させるための具体的な仕組みについて議論した。

発表では、「仮面懇親会」で世代や立場の心理的ハードルを下げる工夫や、学生と出資企業を繋ぐプラットフォームの創設、学生団体同士のイベント情報を集約するマッチングアプリの開発などが提案された。

また、水餃子やキムチ作りなど「食」を通じて、政治的背景を抜きに純粋に楽しめるハードルの低いイベントを入り口にすべきといった若者らしい柔軟なアイデアが多数寄せられた。

これに対し、講評を行った社会人ゲスト陣からは「共通の関心事で惹きつける手法は非常に有効」「まずはコストをかけずに繋がれるオンラインの仕掛け作りが重要」といったアドバイスが送られた。




次世代へ繋ぐプラットフォームへ


閉会式では、再び苅間氏が挨拶に立ち、長年中国映画などの研究や交流に携わってきた自身の経験を交えながら総括を行った。

「政治など微妙な問題もあるが、具体的な問題は具体的に解決するしかない。一方で、目の前の大変なことに目を奪われず、長い目で見る『大局観』を持つことが大事だ」と強調。

さらに、かつて自身が直接中国の作家に会いに行き「あなたの作品の何が面白いか」を熱く語り合ったエピソードを披露。

「何が楽しいか、何が面白いかを語れる言葉を持てば、『何人(なにじん)』という違いや壁はなくなる。若い時には、本物の芸術を見るのと同じように『良い人間』に出会ってほしい」と参加者たちを熱く激励した。

フォーラム終了後には、会場内のレストランにて、ディナー付きの懇親会も開催され、参加者たちはリラックスした雰囲気の中で親睦を深めた。

閉会後、南浦代表は当メディアのインタビューに対し、「ネットワークを作るという目標が一つ具現化でき、参加者の楽しそうな顔が見られて本当に良かった」と手応えを口にした。

国際情勢が複雑化する中での活動には困難も伴うが、「来年もぜひ開催したいし、何かしらの継続的なプラットフォームにしていきたい」と意欲を見せる。

政治レベルでの日中韓関係が複雑さを増し、時に相互不信が煽られがちな昨今において、若者たちが自発的に集い、草の根のネットワークを築こうとする今回の試みは極めて大きな意義を持つ。

本フォーラムで学生たちが語ったように、異なる社会の構造を理解しようとする「社会的想像力」や、自身が異国でマイノリティとなる経験は、他者への寛容さと深い共感を生み出していた。

イデオロギーや国家間の対立に左右されず、食や文化、そして純粋な「人としての繋がり」を起点とした彼らの対話は、決して一時的なものでは終わらないと信じたい。

違いを恐れず、互いの背景を尊重しながら編み上げられた「絆」が、平和で寛容な東アジアの未来を切り拓くための、強固なプラットフォームへと成長していくことを強く期待したい。

(N-Create代表の南浦知帰さん)




・日中友好会館
HP:https://www.jcfc.or.jp/






(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。日本外国特派員協会(FCCJ)会員)

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