「孫中山先生 生誕160周年記念講習会」が東京で開催
「壮大な理想と不屈の精神」──現代に響く大アジア主義の真髄

2026.09.01
(記念講習会の様子)



今年11月12日に中国民主革命の偉大な先駆者である孫中山(孫文)が生誕160周年を迎えるのを前に、8月21日、東京都中央区銀座に所在する東京華僑総会特設会場において、「孫中山先生 生誕160周年記念講習会」が開催された。

孫中山は日本では「孫文」の名で広く知られているが、中華圏においては「孫中山」の呼称が一般的だ。

本講習会は、(一社)東京華僑総会が主催。

会場には多くの在日華僑・華人、日中交流関係者や専門家が集い、孫中山の遺した思想と歴史的足跡に思いを馳せた。




「第2のふるさと」から「革命の大本営」へ


開会にあたり、主催を代表して東京華僑総会の銭江麗子会長が登壇。

「孫中山先生にとって、生涯の約3分の1を占める日本滞在時代の重要性」に触れ、各界の支援に感謝を述べた。

続いて中国駐日本国大使館の張祖軍参事官による挨拶も行われた。

「孫中山先生は国家統一と中華振興のために生涯を捧げた。その遺志は今日も受け継がれている」と述べ、海外僑胞への連帯を呼びかけた。

講習会の基調講演では、千葉商科大学の趙軍名誉教授が「壮大な理想 不屈の精神~孫文の日本滞在時代を語る~」と題して登壇。

辛亥革命や大陸浪人の研究を専門とする同氏は、孫中山の約9年間にわたる日本滞在時代を紐解いた。

趙教授は、日本が孫中山にとって「第2のふるさと」であっただけでなく、辛亥革命を支える「革命の大本営」へと変化していった経緯を詳しく解説した。

(東京華僑総会の銭江麗子会長)




支援者たちの群像と「大アジア主義」の真実


講演では、宮崎滔天や梅屋庄吉をはじめ、頭山満、内田良平といった多岐にわたる日本人支援者との交流が紹介された。

趙教授は、彼らの支援の動機が「自由民権主義に共鳴した純粋な同志(宮崎ら)」「国権主義に基づく国益の追求(頭山ら)」「清朝滅亡を見据えた政財界の政治的投資」と三者三様であったことを史実に基づいて指摘し、当時の支援関係が「同床異夢」の側面を持っていた複雑さを浮き彫りにした。

また、孫中山が1924年に神戸で提唱した「大アジア主義」について言及。

西洋の「覇道(武力・搾取による支配)」を退け、東洋の「王道(徳による統治)」を重んじつつも、東西双方の文明の良い部分を取り入れ融合しようとした孫中山の壮大な理想を解説。

これは当時の日本の国粋主義者らが掲げた侵略的なアジア主義(後の大東亜共栄圏など)とは根本的に異なるものであったと論じた。

(趙軍名誉教授)




活発な質疑応答と日中友好への願い


質疑応答では、妻・宋慶齢氏とのエピソードや、東京・現在のホテルオークラ敷地内にあったとされる滞在先での不自由な生活、さらには現代の「人類運命共同体」と孫中山の「大アジア主義」との概念の違いなど、多角的な視点から活発な意見交換が行われた。

続いて、孫中山の盟友・宮崎滔天氏の曾孫にあたる宮崎黄石氏が登壇。

「現在の良好とは言えない日中関係の中でこそ、曾祖父たちが同志として心を通い合わせた歴史を思い出し、対話を通じて良い関係を築いてほしい」と語り、会場から大きな拍手があがった。

最後に、全日本華僑華人和平統一促進会の劉迪会長が「我々一人ひとりが孫中山先生の精神と彼が開拓した道の継承者である」と閉幕の辞を述べた。

(質疑応答の様子)

(宮崎黄石氏)




現代へのメッセージ:自国第一主義を超える視座 


講演後、インタビューに応じた趙軍名誉教授は、孫中山の思想が現代に持つ意義や、分断が進む国際社会に対する示唆について語った。



--本日はお疲れ様でした。今回のイベントの感想をお聞かせください!

趙軍名誉教授(以下、趙):
孫中山先生は歴史上の偉人というだけでなく、その思想や多くの行動は現代の私たちにも影響を与えています。

現代や今後の歴史がどう発展していくのか、人類がどのような選択をすべきかについて、多くの先見的な示唆を与えてくれる存在です。

彼が私たちにどのような精神的遺産を残してくれたのかを振り返ることは、現代社会を生きる私たちにとって非常に意義深いことです。

今日私は主に2つのテーマについて話しました。1つはみなさんもよくご存知の「不屈の革命精神」です。

もう1つ、私たちにとって大きな啓発となるのは、彼がずっと以前から人類社会が直面する国際的・地球規模の共通問題について模索し、その解決策を探っていたということです。



--今日の講演では、革命という側面だけでなく、人類が共通して直面する文化的な課題に対する孫中山先生の思想を、別の角度から理解してほしいという思いがあったのですね。

趙:
その通りです。

講演では駆け足になってしまいましたが、「文明に対する理解」がその一つです。

東洋文明と西洋文明、どちらが優れているか、あるいは遅れているかという問題ではなく、それぞれに長所と短所があります。孫中山先生は早くからその点に気づいていました。

彼自身が欧米社会で生活し、中国でも様々な教育を受けたからこそ、資本主義の弊害と制度の長所を明確に見て取ることができたのです。


そこで彼は、「善き結果を取り入れ、悪き結果を退けるべきだ」と提唱しました。

これは非常に重要な論断です。

彼は100年以上も前に東西文明の境界を越え、全く新しい文明を築く道を模索し始めていました。

最終的な答えを出せたわけではないかもしれませんが、彼が提示したアプローチは非常に正しい方向性だと考えています。



--生誕160周年を迎える今、多文化共生が容易ではない現在の社会情勢において、孫中山先生の思想は現代の私たちにどのような役割を果たすとお考えですか?

趙:
現代の国際社会では、アメリカやヨーロッパ、日本などいくつかの主要国で、反グローバリズムや反近代化といった思想の逆流が見られます。

そのような状況下だからこそ、民族や国籍を超越する、特に「自国第一主義」という狭隘な政治的視野を超えることには、非常に重要な示唆があります。



--最後に、趙先生は、孫中山先生の思想を学ぶことを通じて、今後の社会にどのような展望や期待をお持ちですか?

趙:
「合理化」というのは人類社会が発展する上での基本的な趨勢であり、孫中山先生はそれを「世界大勢(世界の大勢)」と呼びました。

この大勢は時に阻まれたり、逆流が生じたりすることがあり、その規模が大きくなることもあります。

おそらく私たちは現在、そのような状況下にいるのでしょう。

しかし、決して落胆したり、悲観したり、また流れに身を任せたりする必要はありません。

孫中山先生が当時語った言葉を思い出してください。

「世界潮流、浩浩蕩蕩、順之者昌、逆之者亡(世界の潮流は大きく力強い、それに順応する者は栄え、逆らう者は滅びる)」と。



--


幾度もの失敗に屈することなく、東洋と西洋の文明の昇華を目指した孫中山の「不屈の精神」と「壮大な理想」は、分断が懸念される現代社会において、いまなお色褪せることなく力強いメッセージを放ち続けている。




(一社)東京華僑総会
HP:https://www.tokyo-chinese.com/






(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。日本外国特派員協会(FCCJ)会員)

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