
前回のインタビューから約10ヶ月。
SNSの総フォロワー数を大幅に伸ばし、人気クリエイターとして躍進を続ける「日中夫婦 健&茜」のお二人。
この10ヶ月の間には、第一子誕生という人生における大きな転機もありました。
現在、彼らのインフルエンサーとしての活動は動画制作にとどまらず、ますます多岐にわたっています。
Trip.comや河南省政府に招待されての現地視察や深圳のハイテク企業訪問をはじめ、中央大学での学生向け講演、さらにはYouTube公式のクリエイターイベント(Google Japan)に招待されるなど、その活躍の場は急拡大しています。
また、日中夫婦としての等身大でリアルな発信は出版・メディア界からも注目を集めており、ジャーナリスト・中島恵氏の著書『中国人は日本で何をしているのか』(日本経済新聞出版)や、人気クリエイター・とある中国人のむいむい氏の著書『私たちはどうしても日本にムキになる』(主婦と生活社)に、彼らのエピソードが掲載されるなど、各種メディアへの露出も増え続けています。
単なる「家族系チャンネル」の枠を超え、社会的な意義を持つ「日中メディア」へと進化を遂げようとしている健さんと茜さん。
今回は、親になったことによる心境やコンテンツ作りの変化、最前線で体験した「リアルな中国」、そしてお二人が見据えるこれからのビジョンまで、お話を伺いました。
第一子誕生と、インフルエンサー活動への影響
--今年(2026年)4月に第一子をご出産されたとのこと、本当におめでとうございます!お子さんが生まれて、生活やインフルエンサー活動にはどのような変化がありましたか?
健・茜:
ありがとうございます!
茜さん(以下、茜):
チャンネルの方向性については、実は少し迷いました。
日中夫婦系だと子どもを含めて発信している方も多いのですが、私たちは「夫婦のチャンネルだから、子どもは出さないようにしよう」と徹底することにしたんです。
健さん(以下、健):
子どもには子どもの人生がありますからね。
親として自分の子どもはめちゃくちゃ可愛いですが、チャンネルを見てくれているファンの方々が求めているのは、あくまで「中国の文化」や「日中夫婦のリアル」です。
赤ちゃんの写真ばかりになって、チャンネルの方向性が変わってしまうのは避けたかったんです。
茜:
「赤ちゃんを見てほしい」という承認欲求に負けず(笑)、視聴者が何を見たいかをしっかり考えてコンテンツを作っています。
ただ、中国の義理の両親が日本に来てくれた時の関わり方などは、日中の文化の違いを伝える文脈として、子どもの顔を隠したうえで動画に出すことはあります。
--育児と動画制作の両立は大変ではないですか?
茜:
かなり大変です!(笑)
先日は、お母さんが体を休めるための「産後ケア施設」に泊まり込みながら、1週間で一気に動画のストックを作ったり、行政のベビーシッター制度を利用したりして、なんとか回しています。
健:
子どもから目を離せないので、中国のイベント(深圳や西安など)に呼ばれても、なかなか2人揃って行けないという制限は出てきましたね。

活動の幅の広がり:教育・交流イベントでの講演
--前回のインタビューから活動の幅がかなり広がりましたよね!昨年10月には、中央大学の茗荷谷キャンパスで開催された「第二回 日中学生サミット※」で講演されたと伺いました。
健:
はい。日本への留学を考えている中国の優秀な高校生たちや、日本人学生に向けて、日本留学のポイントや、日中夫婦の生活についてお話ししました。
茜:
15~18歳くらいの若い世代に向けてですね。
健:
とても楽しかったです。
中国人学生からは「どうやって日本人の妻を見つけるのか」というリアルな質問が飛んできたり(笑)、日本人学生からは「日中夫婦の生活での摩擦はどう解決するのか」という突っ込んだ質問が出たり。
難しいAIの話よりも、恋愛や文化の違いといった等身大のテーマが、一番興味を持ってもらえたようです。
※「日中学生サミット」とは
中国国際教育交流協会が主催。株式会社GES(日中文化交流センター)・NPO法人日中留学推進機構による運営のほか、学生団体「上智大学中国留学生会」と「日中学生交流団体freebird関東支部」の協力により開催されたイベント。
日中両国の優秀な大学生を中心に、中学生や高校生まで幅広い世代の学生が集い、国際的な視点とリーダーシップを養うことを目的としている。
第2回は400名弱の学生が参加した。

--今年3月にはYouTube公式のクリエイター交流イベントにも招待され、Google Japanのオフィスを訪問されたと聞きました!
茜:
はい!
トップインフルエンサーの方々がどうやってチャンネルを伸ばしたのかという講演を聞けたり、最新のトレンドや新機能を公式から直接教えてもらえる貴重な機会でした。
これを活かして、さらに良いコンテンツを作っていきたいです。
視察ツアーで見えた「リアルな中国」
--招待ツアーにも複数参加されていますね。今年7月には「『私の目に映る中国』海外から見た中国短編動画コンテスト」の訪中団として、深圳のハイテク企業を視察されたとお聞きしました。「Pony.ai(小馬智行)」や、ロボット企業の「Elephant Robotics(大象機器人)」、「Insta360」なども訪問されたとか。
茜:
スケジュールはかなりハードでしたが、最先端の中国ハイテク企業の技術に触れることができ、とても貴重な経験でした。
ただ、最新の決済技術など、キラキラした最先端の中国を見せていただけて刺激にもなりましたし、素晴らしかったんですが、私たちのファンが見たいのは、おそらく「綺麗にパッケージ化された中国」だけではないんですよね。
-- 茜さんは元々「ByteDance」(TikTok運営会社)でコンテンツリスク管理の業務を担当されていましたが、そのご経験から見ていかがでしたか?
茜:
私は以前から中国のAIスタートアップや大企業のオフィスを見てきたので、「やっぱりこんな感じだよね」と新鮮味はそこまでありませんでした(笑)。
むしろ、ツアーの合間を縫って夜市に行き、等身大のリアルな中国の姿を撮影するよう意識しました。
健:
日本の視聴者も中国の最先端の部分だけじゃなく、昔ながらの街並みや人間くさい部分も見たいと思うんです。
茜:
なので、最先端の技術を紹介しつつも、私たちの普段のちょっと素朴なトーンを交えながら発信するように工夫しました。


--2025年10月には、Trip.comと河南省政府の招待で河南省も視察されていますね。
茜:
「尋找最老的中国(最も古い中国を見つける)」というテーマのツアーで、甲骨文字の博物館や龍門石窟、少林寺などを巡りました。
私は世界史の古代王朝が大好きなので、実物を見られてめちゃくちゃ面白かったです!
健:
日本や韓国など、海外のインフルエンサーが集まったツアーでした。
茜:
他の国のトップインフルエンサーたちと交流できたことも刺激になりましたし、もっと頑張らなきゃと思わされましたね。


提携企業の拡大とメディア・著名人コラボ
--企業との提携も増えていますよね。Trip.comや海底撈火鍋、UHA味覚糖、日清食品、Temu、HelloTalkなどに加え、最近ではiSDGの麻辣湯の動画もバズっていましたね。
健:
はい。
ただ、来た案件を全て受けるわけではなく、本当に視聴者さんに合っているか、私たちがお勧めしたいと思えるものだけを厳選しています。
茜:
麻辣湯の時は「中国人が食べて素直な反応を見せる」という企画にしたところ、すごく反響がありました。
企業さんにとっては、動画がバズるだけでなく、実際に「買ってみます」というコメントが多くつく方が購買につながるので、そういった動画作りを心がけています。
--メディア掲載や著名人とのコラボも話題です。中島恵さんの著書『中国人は日本で何をしているのか』や、むいむいさんの著書『私たちはどうしても日本にムキになる』にもお二人のエピソードが掲載されました。
健:
中島さんとは以前からイベント等でご縁があり、日本で真面目に働く中国人サラリーマン、そしてYouTuberという立場でインタビューを受けました。
茜:
むいむいさんの本では、私たちが動画で話した「中国人夫の恋愛観」や「家族の意見を大事にする文化」などを取り上げていただきました。
むいむいさんはYouTuberとして影響力のある方なので、少しでも貢献できて嬉しかったです。


--メディアと言えば、山下智博さんと、むいむいさんの「最新中国 知っとかNAITOチャンネル」にも出演されましたよね!とても面白かったです!
茜:
動画コンテストで山下さんが審査員をされていて、私の動画を見て声をかけてくださいました。
日中夫婦の馴れ初めや、健くんが私の家族に結婚の挨拶をした時に「ヤバいパワポ」でプレゼンした話などで盛り上がりました(笑)。
健:
履歴書のように「日本でちゃんとした仕事をしていて、怪しい者ではありません」と親御さんを安心させるためのプレゼンだったんですけどね(笑)。
先日、インフルエンサーのヤンチャン(楊小溪)ともコラボ撮影をしたので、そちらも近々公開される予定です!
方向性が近くて目標としている方なので、ご一緒できて嬉しかったです。

多文化共生の実現と、今後のビジョン
--日中関係のニュースなどを見ていると、時に厳しい意見やアンチコメントが来ることもあると思いますが、お二人のスタンスはブレませんね!
茜:
アンチコメントも最初は辛かったですが、今は「新しい層(ファン以外)に動画が届いている証拠だ」と前向きに捉えています。
時間を割いてコメントを書いてくれるということは、心が動かされているわけですから。
健:
日中関係について、ネガティブなニュースばかりが目立つ時期もありますが、私たちはなるべく客観的に、中間に立って発信したいんです。
どちらが良い悪いではなく、「お互いの文化や歴史には素晴らしいところがある」と。
力は弱いかもしれませんが、暗い環境の中で光る「小さな光」になりたいと思っています。
茜:
最近、義理の両親が日本に来てくれた時の動画がすごく伸びたんです。
中国の田舎から来た義母が手厚い産後ケア(坐月子)をしてくれたり、義父が手料理を振る舞ってくれたり。それを見て、「家族の物語は強いな」と実感しました。
政治には左右されないし、素直に心に入りやすい。
「中国にはこんないい人たちがいるんだ」「家族愛が素晴らしい文化なんだ」と、疑念なくリアルな中国を見せられる方法だと気づきました。
--とても素晴らしい視点だと思います。最後に、今後の目標を教えてください!
茜:
これまでは「日中夫婦の中で一番有名になりたい」と思っていたのですが、今はその枠を超えたいと考えています。
ただの夫婦チャンネルではなく、社会的な意義を持った「日中メディア」として、さらに幅広く成長していきたいです。
--ますますのご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!
健・茜:
ありがとうございました!
・「日中夫婦 健&茜」
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・前回のインタビューはこちら
↓
(取材・文/劉聡/在日中国人ライター。日本外国特派員協会(FCCJ)会員)



