
タイ・バンコク出身で、来日10年目を迎えたパタウィパンナパット・パンサシさん(パンさん、通称Shif(シフ)さん)。
タイ語通訳、ライター、字幕作成、アーティストのアテンドなど多彩な分野で活躍する彼女は、常に「タイと日本の架け橋となる仕事」を軸に活動を広げてきました。
日本語との出会いは小学生のとき。
好奇心から始まった学びは、やがて仕事にも繋がっていきました。
Shifさんは、タイ・バンコクの泰日工業大学経営学部日本語ビジネス学科を卒業後に来日。日本在住歴は10年です。
大手を含む数々の日本企業で働いた経験を持つほか、個人でタイ人向けに日本の食を発信している「JAPAN EAT STORY」はフォロワーが8万人を超える、勢いのあるFacebookメディアとなっています。
そんなShifさんに、日本で働く理由やメディアへの情熱、インバウンドの最前線で感じる課題、そして今後の展望までお聞きしました。
−− 今日はよろしくお願いします!まず最初に自己紹介をしていただいてもいいですか?
タイ出身のパタウィパンナパット・パンサシです。
呼び方はパンサシかパンだけでも大丈夫です。
あだ名はShifです!
−−なぜ、あだ名が「Shif(シフ)」さんなんですか?
タイでは、本名とは別に、親が子どもに付けるあだ名(チューレン)で呼び合う習慣があるんです。
私のあだ名「Shif(シフ)」は父と母の名前から付けられました。
−−そうなんですね!
タイのバンコク出身で、来日して10年目になります。
現在の仕事は、通訳だったり、3つのインバウンドメディアでライターをしていたり、EC向けの仕事もやってます。
タイのアーティストのアテンドなどもしてます。
基本的には、タイと日本の架け橋になるお仕事は何でもやってます。
−−元々その一番最初に日本に来られたきっかけは何だったんですか?
最初は旅行です。初めて来日したのは中学2年生でした。
2回目の来日は、中学3年生のときです。
学校の文化交流のプログラムで、静岡に1週間短期のホームステイをしました。
実は小学生時代から、日本語勉強してたんですよね。
−−小学生から!珍しいですね!
みんなが分からないことが知りたいと思ったんです。
自分が何を喋ってるのか、みんなが分からないことが楽しくて。
−−日本語だった理由は何ですか?
他の人も同じ答えしてると思うんですけど、日本のゲームだったり、あとアニメにハマってたので。
それが、きっかけで日本語を見て、ひらがなが可愛いなと思いました。なんか丸いみたいな(笑)
小学校3年生から、ひらがなを勉強し始めました。
塾通いを始めて、ゆっくりのペースで日本語を勉強していました。
とはいえ、全然喋れなかったですね。
中学3年生の時のホームステイでは、ホストファミリーの皆さんに言葉が通じなくて。
それで悔しくて、悔しくて。
その時、「今度ホストファミリーの皆さんと会う時に絶対喋れるようになる」という目標を設定しました。
それから、より真剣に日本語を勉強し始めて、高校2年生で、もう1度ホストファミリーに会いに行った際には、ようやく喋れるようになっていました。
それ以降も、何回か日本に来るようになって。日本語を勉強することが楽しくて、タイの大学でも日本語を専攻しました。
大学卒業前から、タイでは簡単な通訳のお仕事をしていました。
とはいえ、タイでは日常的に日本語をあまり使いませんよね。
そのため、日本語を上達したいなら、日本に行った方がいいと考えて、2014年10月に来日しました。

−−ぜひ、来日後の簡単な遍歴なども教えていただけたら!
2014年に来日した時は、1年間の留学ビザで、日本語学校に通いながら、バイトをしたりしてました。
それ以外にも、タイでの人の繋がりから、紹介とかもちょこちょこあったので、メディアへの出演だったり、インバウンド関係のお仕事も多くやらせてもらいました。
その後、日本企業のコールセンターで働くなどして、日本の社会勉強をしました。2年目はそんな感じでしたね。別の日本企業でタイ語を使ったデバッグの仕事なども経験しました。
日本企業退職後に、インバウンドメディアで働き始めました。
−−ぜひ、メディア業界に進まれたきっかけなどもお聞きできれば!
実は、日本企業で働いている時期に個人メディアも開設していまして。
「JAPAN EAT STORY」という、日本の食をタイ向けに発信するFacebookのメディアです。
今はあまり更新してないんですが、現在8万人以上のフォロワーがいます。
当時、運用して3ヶ月で、一気に6万人くらいフォロワーが増加してて、すごいバズったんですよ。
ちょうどそのタイミングで、日本の情報をタイ語で発信するインバウンドメディアの求人に応募させていただいて、メディアをポートフォリオとして提出したところ、即採用されることになりました。
−−3ヶ月で6万人は本当にすごいですね!?
たぶん、同メディアで働いていた時期が、一番自分がやりたいことをやり放題な時期だったと思います。
自分が取材したいものを自分で決めれますし、メディア自体のイメージを決めるところから、記事も書いたり、写真も撮ったり、動画も編集して、広告運用も全部やってました。
写真が趣味で元々好きで、書くことも好きなので。
日本の食べ物も観光地も全部魅力的で、仕事で色んなところに行けてよかったです。
−−写真が趣味なんですね!
大学1年生の時に、Canonのカメラを買ったんですが、写真を通して自分の世界観を共有できるのが、楽しいなと思って。
誰かに褒められるためじゃなくて、写真を見たら、「あの時の自分はこういう感情で撮ったんだな」って分かる写真が好きなんですよ。
−−趣味を活かせる職場はいいですね!
そうなんですが、コロナ禍の時期に会社が倒産したんですよ。
メディアも違う会社に買収されることになって。
買収後のメディアでも、しばらく同じチームで継続してライターをやってはいたんですが、元々辞めようと思っていた時期ということもあって、退職しました。
そのおかげで、3ヶ月くらいゴロゴロできたのは、嬉しかったです(笑)
−−現在まで、日本で働くことを決めた理由はありますか?
せっかく日本に来たから、ここでしかできないことに挑戦したいという気持ちが強くありました。
タイに帰ったら、いくらでも仕事があるということはわかります。タイの方が稼げることもわかってます。
それでも日本で働きたいと思ったのは、働く環境が1つ。2つ目が、日本でしかできないことがいっぱいあると思ったからです。
例えば、日本語ができる人材だと、タイでは、工場の通訳のお仕事があって、給料はめっちゃいいです。でも、それしかないんですよ。毎日のプレッシャーもきつい仕事です。私はあまり魅力を感じませんでした。
日本だからこそ、メディアのお仕事ができたり、いろんな人にも出会えて、お金じゃない部分で、いろんな経験がたくさんできたと思っています。
−−仕事に幅があるという部分が、日本で働く理由なんですね。一度企業が倒産した後も、メディア関係で働き続けるのを決めた理由はありますか?
元々の自分のスキルを活かせる業界だったので。それがきっかけですね。
子どもの頃から書くことが好きで、いつもブログも書いてたんですよ。
日本でブログが流行っていた時期に、タイでもブログが流行っていました。
あとは、デザインや、先ほども言ったように写真を撮ること好きだったので、それが仕事になることが嬉しかったです。
−−今まで自分の積み重ねと業界に親和性があったわけですね。Shifさんが思うメディア関係で働く魅力はなんですか?
うーん、魅力。なんだろう。
メディアだからこそ、発信力があるというか、信頼される、そういう存在になれるというのは、いいなと思っています。
自分が結構自由人なので、企業メディアで書くことと、個人メディアで書くことは、内容が少し違うんですよね。
企業メディアだと書けない部分があるじゃないですか。
それが自分のメディアで爆発する感じです(笑)
−−爆発するんですね(笑)どのような違いがありますか?
例えば、レストランに来たとして、期間限定のメニューがあるとします。
企業メディアだと「こういうメニューは、期間限定で◯日まで食べることができます」という書き方で終わりじゃないですか。
自分のメディアだと、美味しい、美味しくないといった主観的なことが言えます。
何にも忖度せずに、自分の感想を言えるか言えないかという違いですね。

−−これまでに多くの取材をしてきたと思いますが、印象に残っているエピソードはありますか?
一生忘れられない取材があります。
山形県庄内地方と新潟県での、1週間泊まり込みの取材です。毎日朝7時から夜10時まで。
庄内地方の名物といえば「鮭」ですよね。
これが3食出てきました。
焼き鮭、生鮭。炊き込みご飯、味噌汁とか。いろんな形で「鮭」が出てきます。
途中で、豚肉が食べたくなったほどで(笑)
1食だけ「山形牛」出てきたときは、嬉しかったですね(笑)
−−すごい取材ですね(笑)最終的にはどういうアウトプットになったんですか?
とても長いタイ語の記事を2本出しました。
新潟県と山形県で分けて発信しました。
新潟県は、駅についてからの日本酒の楽しみ方や訪問した観光地の紹介を。
山形県は、舞子さんと出会えることや加茂水族館の紹介もしました。クラゲがいっぱいいる水族館です。最近流行り始めてますよね。
そう考えると、誰よりも早く話題になりそうなスポットを取材できるというのは、メディアで働くことの一番の魅力かもしれません。
−−先ほど日本で働くことを決めた理由はお聞きしましたが、日本で10年間働いてきて、日本社会について感じることは何かありますか?
海外から見ると、日本はとても発展している国だと見られていますよね。
最新のテクノロジーを持ってるというイメージ。全世界から注目されてるぐらいの国っていうイメージです。
でも、なぜか、仕事のやり取りはファックス(笑)
これは、なんでだろうって思ってるんです。
特にインバウンドの仕事を中心にしていた時期に一番感じたことですが、今だに思います。
インバウンド関係のお仕事をすると、記事を書いて、自治体に提出するんですが、提出する際、郵便じゃないとダメなんです。
担当者が3人だと、3部送らないとダメです。修正はファックスで。
お互いメールを持ってはいるんですが、郵便かファックスなんです。
−−とても時間がかかりますよね。
そこは、少し残念というか。
海外の働く環境は、日本ほど良くないですが、仕事のスピード感を重視している国が多いと思うんですよ。みんなLINEでやり取りして終わり。やり取りが30分で終わります。
日本だと、同じやり取りが1ヶ月くらいかかります。
そうすると、できることが少なくなりますよね。
−−逆に日本で働くことの魅力についてもお聞きしたいです!
日本の働く環境はめっちゃいいですよ。
例えば、企業によっては、家賃も負担もしてくれるし、どの会社も交通費を支払ってくれるというのが、すごいなと思っていて。基本的にタイは交通費負担してくれないんですよ。
あとは、社会保険や年金も、タイだと企業からのサポートはないですね。
日本企業はボーナスもしっかりしていますよね。もちろん全ての日本企業がそうじゃないと思いますが、基本的にはしっかりしてると思います。
あと、ハラスメントとかも、中小企業を含めて、しっかり対応してると思うので。
−−フリーランスとして日本で働くということはどうですか?タイと比べて違いはありますか?
タイでフリーランスになったことはないので、比較できない部分もありますが、タイと日本で一番大きな違いは、発注書の有無ですね。
日本の大手企業とやり取りすると、必ず発注書がありますし、やり取りが優しいというか、そういうところがとても良いなと思っています。
−−タイ─日本間のビジネスの可能性について、感じることはありますか?
最近、タイと日本で一緒にできるビジネスが増えてきたと強く感じています。
コロナ禍明けから、通訳の仕事がすごく増えているんですよ。
タイ人は、日本でビジネスをやりたいんですけど、できることが少なかったんです。
でも、コロナ禍に入ってから、タイのBL(ボーイズラブ)ドラマがバズり始めて、そのおかげで、BL関係のお仕事を定期的にいただいて。
ドラマの字幕を作ったり、最近だと、ファンミーティングのライブビューイングの企画とかもやらせてもらってます。
タイ─日本間で、こういうエンタメ系のビジネスが増えてきたなというのを実感しています。
来月もタイで今1番有名なアイドルグループのファンミーティングを日本でやります。
あと、サマーソニックにも出ますよ。
−−色々な有名人に会えていいですね!
そうですね。以前、自分の好きなバンドのアテンドをさせていただいたこともあります。
−−すごいですね!普段はどういう経由でお仕事を引き受けていらっしゃるんですか?
知り合い経由ですね。知り合いの知り合いとか。
3年ほど前から、タイのアーティストがどんどん日本に来るようになって、ホールスタッフもやったりしたんですが、だんだん、通訳もするようになって、アテンドもやるようになり…。
タイのトップアーティストの来日の際にも全てアテンドさせていただきました。
すごく楽しかったです。
アーティストのみなさんのスケジュールはとても忙しいですが、みなさん「日本に来られてとても嬉しい」と言っていて、日本に来られることを心から喜んでいます。
−−最後の質問になるんですが、ぜひ今後の目標や展望をお聞きしたいです!
うーん、目標というと、すでに達成してるという部分もあるんですが、これからも「タイと日本の架け橋になれる立場」であり続けたいですね。これ以上の目標はあまりないかもしれません。
自分が仕事をして、誰かの役に立ったと感じられるとき、やりがいを感じられる時が、本当にいいなと思います。
例えば、この間の通訳の話です。
タイのお酒の試飲会がありました。
あまり日本の方に知られていない、タイの伝統的なお酒の試飲会です。
私は、その場でお酒の説明をしたんですが、その説明に対して、日本の方が納得した顔や驚いた顔を見せてくれました。
自分の説明で日本の方にタイのことを知ってもらえたことが本当に嬉しかったです。
逆に、日本の魅力をタイの人に知ってもらえることも嬉しいです。
日本もタイも大好きです。これからタイと日本は、もっと仲良くなっていくと思います。
自分も、その繋がりの中の1つのピースになれたらいいなと思っています。
プライベートだと、今は側弯症を治したいですね(笑)
そのためにヨガにも行ってます!

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【HYAKUYOU編集部】